労働者の健康と安全(4)
−職場の管理体制を整える−
今回も、労働安全衛生法(労安法)の中身をちょっとかじってみましょう。
前々回に、労安法の目的について触れたことを覚えているでしょうか。その中に、「労働災害の防止のための危害防止基準の確立」「責任体制の明確化」という言葉があったと思います。
労安法は、目標だけ掲げて何もしないという無責任なことはしていません。上に出てきた言葉を実行に移すために、各企業の事業場において、「安全衛生管理体制」を整備することを求めているのです。
たとえば建設業の場合、100人以上の労働者が常時雇用される事業場では、「総括安全衛生管理者」の選任が必要です。工場長がこの役に選ばれたりしますね。「うちは100人も使っていないから関係ないぜ」とおっしゃる経営者の方もいるでしょう。それでも、50人以上の労働者がいる場合には、「安全管理者」「衛生管理者」「産業医」をそれぞれ置く必要があります。これらの人たちは、非常に重要な責任を負っているため、選任には一定の資格が必要となっています。さらに、10〜49人という小規模な事業場でも、「安全衛生推進者」か「衛生推進者」のどちらかを置かなければなりません。
やはり、責任の所在があいまいだと、誰もが「誰かがやるだろう」という気持ちになってしまい、気づいたら重大な事故が発生していたなんてことになってしまいます。日ごろから、こうした管理者を明確に定め、そのリーダーシップの下で、安全かつ快適な職場環境を作っていきましょう。
ちなみに、安全衛生管理体制の概要については、各地の労働局のホームページが解説してくれています(たとえば、栃木労働局のこのページ
http://www.tochigi-roudou.go.jp/hourei/eisei/kanritaisei.html)。
「産業医って何するの?」、「私は安全管理者になれるの?」といったときなどに参考にしてみてください。
2010年5月24日
弁護士 鈴木哲郎
(ホウネット中小企業メールマガジンより転載)