労働者の健康と安全(3)
労働者の健康と安全をテーマに連載をしていますが、今回からは労働安全衛生法(労安法)の具体的規定をみていきたいと思います。
最初は、労働者の健康確保の基本である「健康診断」についてです。みなさんの会社では、社員さんの定期健康診断を行っていますか?
実は、これはすべての事業者に課せられている義務なのです。労安法では、「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない」(労安法66条1項)とされていて、さらに、厚生労働省令で(1)雇入れ時の健康診断と(2)1年以内ごとに1回の定期健康診断が義務づけられています。この義務違反には刑罰も科せられています。
毎年、健康診断を行うことは、労働者の疾病を早期に発見し、これに対処していくために必要不可欠であると考えているわけです。労働者の健康がいつの間にか悪化して、突如、不測の事態が起きたとすれば、業務に支障が出る可能性がありますから、定期的に労働者の健康を管理することは会社にとっても大事なことですよね。
では、健康診断で健康上の問題点が発見された場合については、どうすればいいでしょうか。事業者は、医師の意見を参考にして、就業場所の変更や作業の転換、労働時間の短縮などの措置を講じなければならないとされています(労安法66条の5)。措置をとったとしても労働者を働かせる以上、使用者には健康に配慮する義務が発生しますので、私傷病による休業をさせて対応する方がよい場合もありえます。
普段から、働く人のことを気遣って、健康診断くらいは当たり前に。もし実施していないなら、年度替わりのこの時期に、ぜひ始めてください。
2010年5月10日
弁護士 加藤悠史
(ホウネット中小企業メールマガジンより転載)