ビラ配布事件で逆転無罪
ビラ配布事件で逆転無罪
2003年11月に「しんぶん赤旗」号外などのビラを配り、国家公務員法違反(政治的行為の制限)に問われて、東京地方裁判所で罰金10万円執行猶予2年の有罪判決を受けた、元社会保険庁職員の堀越明男さんに対して、3月29日に東京高等裁判所は逆転無罪の判決を宣告しました。
公務員の政治活動の自由
憲法では21条1項で表現の自由が定められており、政治的な表現活動(政治活動)をすることは憲法で保障されています。憲法21条1項 「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」そして、この政治活動の自由は、公務員であっても公務員でなくても保障されています。
しかし、国家公務員法102条1項という法律で「職員は、政党又は政治的目的のために、寄付金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。」と定められて公務員は政治活動自由に行うことができないとされています。
今回の東京高等裁判所の判決は、このような国家公務員法の規定自体は憲法21条1項に違反しないが、実際に堀越さんにこの法律を適用することは、「刑事罰に処することは、表現の自由を保障した憲法に違反する」として無罪としたのです。
政治活動の自由がなぜ重要か
憲法学の学説上、政治活動の自由は他の人権よりも一段と高い位置にあると考えられています。これはどうしてでしょうか。
政治活動の自由は主権者である国民が政治に参加するために必要な権利です。いろいろな政党や人の意見を聞かなければ、国の行く末を任すに足る政党や人に対して投票をすることは出来ません。政治活動の自由が一旦侵害されると選挙権を十分に行使できなくなるので、民主主義の過程でその誤りを正すことが出来なくなります。そのため、政治活動の自由は他の人権よりも更に保護されなければならない必要性があります。
国家公務員について、憲法で全体の奉仕者と定められており、政治的信条に基づいて活動することが出来るとすると国民の信頼を害するから、国家公務員法で政治活動の自由を制限することが出来るという見解もあります。
公務員が政治的信条に従って、民主的に選ばれた内閣の指揮に従わないことが許されないのは当たり前ですが、上司やトップの決めた方針に従って仕事をしなければならないのは一般企業であっても公務員でも変わらないはずです。また、業務時間に政治活動をしてはいけないというのは、仕事をすべきという義務に違反していることで十分に説明できます。
国家公務員法によって公務員の政治活動の自由を制約するのは憲法に違反していると言えます。