日本版DBS法が成立 ~子どもに対する性犯罪歴の確認へ
2024年6月19日、子どもに接する仕事に就く人に、性犯罪歴がないかを確認する制度、「日本版DBS」の導入を含むこども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律)が成立しました。2年半以内に施行されることになっています。
DBSとは、イギリスのDisclosure and Barring Service(=司法省管轄の犯罪証明管理および発行システム)のことです。18歳未満の子どもに1日2時間以上接するサービスで働くことを希望する人は、DBSから発行される無犯罪証明書を提出する必要があります。
日本版DBSでは、子どもに接する仕事に就く人に一定期間性犯罪歴がないかを、事業者が、こども家庭庁を通じて法務省に照会できるようになります。新たに雇い入れる人だけではなく、すでに雇っている人も対象になります。
犯罪歴の確認対象となる罪は、不同意性交罪や児童ポルノ禁止法違反、痴漢や盗撮などの条例違反などです。照会が可能な期間は、禁錮刑以上の場合は刑の終了後20年、罰金刑は10年とされています。犯罪歴が確認された場合には、子どもに接触しない業務に配置転換するなどの対応が事業者には求められます。
学校や認可保育所などは性犯罪歴の確認が義務付けられますが、民間の学習塾や学童保育などの参加は任意で、研修や相談体制の整備など一定の条件をクリアした場合には、「認定」を受けて制度の対象事業者となり、学校などと同じ対応が義務づけられます。
日本版DBSに対しては、対象者の職業選択の自由の制約に当たることから、導入に慎重な意見もありました。しかし、子どもに対する性犯罪が被害者の人生に長期にわたり深刻なダメージを与えること(法的にみると、性的自由や人格権などの重要な権利に対する侵害)や、子どもの自衛の困難さを考慮すると、それでもなお必要な制度であると考えます。
もっとも、再犯防止のためには、規制強化だけではなく、性犯罪加害者が地域で更生できるような支援も重要です。たとえば、福岡県では性暴力根絶条例に基づき、性暴力の加害者向けの相談窓口を設けており、4年間で340人もの方が利用したそうです。日本版DBSの導入とともに、加害者を孤立させない社会をつくることも同時に議論されるべきだと思います。
弁護士 裵明玉(名古屋北法律事務所)
「新婦人北支部・機関誌」へ寄稿した原稿を転機しています