残業規制に関する2024年問題
数年前から働き方改革が政府により推進されるようになり、その一つとして時間外労働の規制を設ける法改正が2019年に導入されました。
使用者と労働者の労働契約では、所定労働時間を定めることとなっており、所定労働時間を超えて労働をさせようとする場合に、使用者は残業を命じることになります。使用者が残業を命じる場合には、労働基準法36条に定められた労使協定を結ばなければなりません。36協定が締結されていなければ、労働者は契約に定められた所定労働時間を超える労働を拒否することができます。この点は、法改正前から変わっていません。
法改正前は、36協定を結んでいた場合に残業時間の上限規制がありませんでした。そのため、長時間労働により心身の疾患を患ったり、最悪の場合には過労死に至る事例がありました。こうした状況を改革するために、残業時間の上限が設けられました。法改正により、残業時間の上限は原則として月45時間、年360時間と定められました(一部例外あり)。
但し、法改正後も、建設業や自動車運送業などの一部の業種については、残業時間の上限規制の適用が5年間猶予されていました。これらの業種にも2024年4月から残業時間の上限規制が適用されることになり、これが2024年問題と呼ばれています。
適用猶予されていた業種では、長時間労働が常態化されており、労働者の健康の悪化が懸念されていましたから、上限規制の適用は当然のことです。しかしながら、一般の職種とは異なり、特別条項付き36協定を締結することで、年960時間(月平均80時間)まで時間外労働が認められる例外規定が設けられています。
厚生労働省では、時間外労働が原因で脳・心臓疾患等の労働災害について、直近1カ月で100時間以上または2カ月から6カ月で平均80時間を超えた時間外労働があった場合に労災を認定する基準としています。2024年から残業時間の上限規制が認められる職種では、例外規定が認められると労災基準を超える残業も認められる場合があります。こうした点で、働き方改革というには、まだまだ不十分な点もありますが、2024年4月から上限規制が適用される業種での労働実態を見守りたいと思います。
弁護士 加藤悠史(名古屋北法律事務所)
(「新婦人北支部・機関誌」へ寄稿した原稿を転機しています