今話題の名誉毀損について
最近、「名誉毀損」がニュースを賑わせています。先日も橋下徹さんが訴えた名誉毀損の裁判が棄却されたというニュースを見ましたし、もっと話題なのがタレントの松本人志さんの性加害の事実を指摘した週刊誌の記事が名誉毀損に当たるということで裁判が起こされた件だと思います。
名誉毀損という訴えは、実は一般の方にはわかりにくいものなんです。良くあるのが、「本当のことを言ってるんだから問題ないでしょ」と言って、真実の表現であれば名誉毀損にならないと思っているケースですが、それは間違いなんです。
たとえ本当のことであろうと、人の社会的評価を落とす表現は名誉毀損に該当しますからご注意ください。本当にあった過去の犯罪歴なんかを暴露するケースがよく例に挙げられます。
そしてややこしいのが、もし「名誉毀損」に当たるとしても、違法性のない名誉毀損がある、ということです。
これまでの裁判例上、仮に名誉毀損に当たる表現行為であっても、その表現が①公共の利害に関することであり、②公益目的があり、③摘示事実が真実であった場合には、その名誉毀損の表現行為は違法性がなくなる(阻却される、と言います)という考え方が確立しています。犯罪行為に関する事実の摘示は、多くの場合①と②は満たしており、③の真実であること、が問題とされるケースが多い気がします。
さらに分かりにくくさせているのが、たとえ真実であることが証明できなくても、真実であると信じるについて相当の理由がある場合には、違法性が阻却される場合があるということです。
今回の松本さんのケースで言えば、仮に性加害の事実の指摘が真実であると証明できなかったとしても、真実であると信じたことについて相当の理由があると判断された場合には、名誉毀損を理由とする損害賠償は認められないこともあり得ますので、注目しています。
弁護士 伊藤勤也(名古屋北法律事務所)
(「年金者きた」へ寄稿した原稿を転機しています)