法務局の自筆遺言書保管制度
ここ数年、相続に関する諸制度が大きく変わっています。
2018年に大幅な相続法改正がありましたし(施行日は制度ごとに異なる)、2021年に創設された「所有者不明土地」の扱いも主に相続人不明の場合を想定しています。また、相続税についても次年度以降大きく変わろうとしています。週刊誌の見出しで、相続に関係する記事が載らない週がないくらいです
これらの改正のうち、私が注目している制度が、2020年7月から始まった自筆証書遺言書の法務局保管制度と、それと同時に利用できる死亡時通知制度です。
自筆遺言書は、手軽に自分一人で作成できて簡単なことは良い点なのですが、不便な点あるいは心配な点があってなかなか使い勝手がよくありませんでした。それは①形式不備で無効となる心配、②誰かが勝手に破棄したり隠したりしないかという心配、③誰にも見つけてもらえないんじゃないかという不安、④死亡後に家庭裁判所の検認手続という面倒な手続きがある、という点でした
しかし、法務局保管制度をうまく使えばこれらの心配や不安を解消することができます。
①法務局に保管する際に形式的要件はチェックしてもらえる、②破棄、隠匿の心配がなくなる、③保管申込と同時に死亡時通知を申し込んでおけば、相続開始時に間違いなく誰かに通知される、④そして検認手続は不要になる、といった次第です
まだ始まったばかりの制度で十分周知されておらず、3年間で5万6000件くらいの利用ですが、これから増えていくのではないかと思います
これまで私は公正証書遺言をお薦めしてきましたが、これから遺言書作成を考える方は、選択肢の一つとして覚えておいても良いのではないでしょうか。
弁護士 伊藤勤也(名古屋北法律事務所)
(「年金者きた」へ寄稿した原稿を転機しています)