裁判員年齢の18歳への引き下げ
2022年4月1日から、民法の改正により成年年齢が18歳に引き下げられました。消費者被害拡大の懸念など、心配される点が盛んに報道されましたが、成年年齢引き下げによってほとんど注目されずに変更されたことがあります。18歳も裁判員裁判の裁判員に選ばれることになったという点です。
2009年に開始した裁判員制度は、国民から選ばれた裁判員が刑事裁判に参加し、被告人の有罪・無罪、言い渡す刑を判断するというもので、国民の司法参加により、裁判に国民の視点・感覚を反映させ、司法に対する理解や信頼を向上することが狙いでした。裁判所が行ったアンケートによれば、裁判員経験者の多くが参加経験を好意的に受け止めており、制度開始から13年を経て制度が定着しつつあります。一方で、裁判員が強いられる心理的負担、守秘義務に縛られ経験の共有ができないといった問題がかねてから指摘され、制度の在り方について様々な議論があります。このような重大な制度に18歳から参加することの是非を、当事者となりうる私たちが主体的に議論した形跡はありません。私たちがよく知らない間に制度が変わっていたというのが実態で、これはかなり問題です。
裁判員年齢を選挙権年齢に合わせることは合理的に思えますが、少年法改正後も18歳、19歳は「特定少年」と扱われ少年法が適用されるため、加害者側の18歳は大人として扱われないのに、裁く側では大人として扱うのはいいのか。身近な問題としても、高校生が選ばれたら学校はどうなるのか。これを機に、裁判員制度が抱える課題そのものも含めて、私たち市民が裁判員として刑事裁判に参加することの意味を考えてみるのもいいかもしれません。
弁護士 中島万里(名古屋北法律事務所)
(「名古屋北部民商ニュース」へ寄稿した原稿を転機しています)