憲法学習会「安倍9条改憲NO!」を開催しました
暮らしと法律を結ぶホウネットは、現行の日本国憲法の理念がいかされる社会の実現を展望し、弁護士や司法を市民の身近な存在にしようという活動以外にも、生活相談活動や学習支援活動、憲法を守る立場での学習会などに取り組んでいます。
そういった活動の一環として、9月28日、「安倍9条改憲NO!」と題し、憲法学者の三宅裕一郎さんを講師に招いて憲法学習会を開催しました。
講演では、戦争はしない、軍隊を持たないとし、徹底した非武装平和主義をうたっている憲法9条が、東アジアの「平和の礎」としての意味があることや、戦争や武力紛争を否定した9条を軸とする平和主義が人権保障の基盤となっていること、「積極的平和」の本来の意味が語られました。安倍首相が用いている「積極的平和主義」というのは、軍事も辞さずに国際紛争に当たっていくものだが、他方、平和学の分野では、戦争がないことだけでなく貧困や差別などの暴力もない状態を意味するものとして使われているのだということです。
2015年の安保法制成立などにより、従前はできなかった自衛隊の海外派兵がますます拡大(要件の緩和)されています。憲法そのものの条文は変わらなくても、その時々の政権によって自衛隊のあり方が解釈によって変えられる“解釈改憲”が進んでいますが、それでもなお安倍政権は“明文改憲”に固執しています。自衛隊の任務が集団的自衛権の行使や後方支援にまで拡大されても、しかし憲法9条があるため、それらは限定的なものでなければならないとの歯止めがかかっているのです。憲法9条の力と、だからこそそれを変えたいと目論む政権との緊張関係を掴むことが重要で、安倍首相は「自衛隊を違憲の存在だと言ってはかわいそう」という趣旨の発言を繰り返していますが、実はそんな表面的なことを狙っているわけではないのだと認識する必要があります。
三宅さんは他にも、「自衛隊“加憲”」戦略の狙いも解説。加憲を唱える公明党の取り込み、「完全に変えるわけではない(従来のものを残す)」ことによる国民的アレルギーの緩和、「自衛」を根拠にした戦力保持拡大の可能性等々に言及されました。自衛隊が憲法上の存在となれば、「公共の利益」のうたい文句で土地収用も可能になってしまうかもしれないとの指摘には驚きました。
また、軍備増強や軍事展開(海外派兵等)のなし崩し的拡大を懸念する知識層や市民から、「それらに歯止めをかけるための改憲をすべきだ」との主張もある中、それに対しては、現行憲法が軍事について何も語っていないことこそが最大の制限であると強調。自衛隊の存在を書き込むなどすれば、それは軍事的な権力の拡大につながるだけだと反論されました。
講演の最後では、東アジアにおける国際協調(ASESNなど)の取り組みや朝鮮半島の劇的な平和への動きが紹介され、そしてアメリカ市民と連帯した半軍事の運動の可能性も語られました。
憲法9条の力と可能性を改めて感じることにつながった学習会でした。
2018.11.1
(ホウネット会員K)