ホウネット総会を開催しました。
ホウネット総会記念講演報告
「あなたも“下流老人”に!・・・ ~生きていてよかったと思える社会をつくるには~」
本年度のホウネット総会の記念講演では、昨今話題の著書『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』の著者であられる藤田孝典さん(聖学院大学客員准教授、NPOほっとプラス代表理事)をお招きし、下流老人の現状とその対策についてお話しをして頂きました。
簡単な感想も添えつつ、講演内容のご報告をさせていただきます。
<下流老人の現状>
◇日本は貧困
冒頭では、日本の貧困の現状について説明がされました。日本の相対的貧困率はOECD加盟国の中でも6番目に高く、日本の中で見れば高齢者の相対的貧困率が非常に高いこと、最近の事件(川崎市の簡易宿泊所の火災、新幹線焼身自殺など)の背景にもこの貧困が関わっていることが示されました。
◇下流老人の特徴 3つの「ない」
藤田さんは、下流老人を、「生活保護基準相当で暮らす高齢者、または、その恐れがある高齢者」と定義しています。そして、下流老人に陥る人を分析して①収入がない、②貯蓄がない、③頼れる人がいない、という3つの「ない」を特徴として挙げています。すなわち、下流老人とは様々なセーフティーネットを失った状態といえます。
セーフティーネットを失い下流化してしまった人たちはもはや自力での解決は困難であり、社会全体として対策をしなければ解決は望めないということです。
また、今の若者も老後に下流老人に陥るリスクが相当あることに警鐘を鳴らしています。 すでに現在、年金給付額が削減される方向にあること、低収入の非正規労働者が増加し、老後に備えた貯金ができないばかりか年金も納めることもできない若者が増加していること、収入の減少により結婚が出来ないため将来独居高齢者となる予備軍が増加しています。これはまさに将来3つの「ない」に陥ることが予測できてしまいます。
日本では、富める者は富み、貧しい者はますます貧しくなる格差社会が年々、目に見えて進んでいます。自己責任論が根強くなるにつれ、下流化してしまった人たちを支える手も不十分となっています。格差社会の拡大は、国力の低下にもつながることを意識して、今一度社会の見直しを考えさせられる現状説明でした。
<下流を防ぐには>
藤田さんは、社会で対策を講じる必要性を説いたうえで、下流を防ぐためにすべきこととして次のようなことを挙げています。
・社会保障・福祉制度を利用すること、使える制度がないか相談すること
・プライドを捨てること
・収入源をいくつか確保し、可能な限りの貯蓄をすること
・地域社会への積極的な参加をすること
・支援される受援力を持つこと
なかなか年をとってから、新しく収入源を確保したり、貯蓄をすることは難しいとは思いますが、利用できる社会保障・福祉制度は利用すること、関係性を作ることは今からでも心がけられることだと思います。困ったときには助けてもらおうという気持ちを持つことは必要だと思います。
ホウネットでは、近年、貧困問題に関心を有し、総会の記念講演の講演テーマも貧困にまつわるものが多くあります。また、貧困世帯への学習支援や、こども食堂などの取り組みも行っています。こうした活動の必要性、意義は十分に実感しながらも、一団体としての限界を感じつつ日々苦悩と苦労を重ねています。国や行政や、根本的な解決をするにはどうするかを考えてもらうためにも私達の声を発信し続けていきたいと思います。
また、ホウネットでは、さまざまな活動・交流を行っています。それらを通じて、新しい関係性を作ってみてはいかがでしょう。皆様の今後の積極的な関わりをお願いします。