ホウネット通信

ホウネットの無料塾の取り組みについて

2014年10月31日

ホウネットの「無料塾」の取組みについて

 

弁護士法人名古屋北法律事務所 長尾忠昭

 

1 暮らしと法律を結ぶホウネット

「暮らしと法律を結ぶホウネット」は、2003年12月に結成されました。名古屋北法律事務所とともに、市民にとって法律と司法が身近なものになるよう努力し、人権、民主主義、平和のため、地域の人々と共同して取り組みを進めることを目的としています。

ホウネットは、リーマンショックの頃から法律相談だけではなく、暮らしに関する相談にも応じようと「暮らし何でも相談会」を開催していましたが、常設の相談所の必要性を強く認識し、名古屋北法律事務所設立10周年にあわせて、「くらし支える相談センター」を開設しました。相談センターは、事務所の入居する7階の部屋(3LDK)を借り、ホウネットの世話人を中心に相談員となり、寄せられる相談に対応しています。

 

2 「貧困の連鎖」を何とかしたい

くらし支える相談センターには、開設以来3年間で500件をこえる相談がありましたが、その15%以上は生活保護の相談です。生活困難家庭の子どもが学習の機会を奪われ、貧困の連鎖を生み出している実態に何とかしなければと、「無料塾」構想が、2013年の春頃からホウネットの運動の一つに加わりました。そして、「子どもの最貧国・日本」の著者である山野良一さんにホウネット総会の記念講演をお願いしたり、学習支援活動を行っている施設に見学も行いました。

 

3 軌道に乗り始めた無料塾

地域の団体などと「無料塾」構想について懇談を続け、今年になり、行政の動きもあり、ようやく動き始めました。現在ホウネットが関与している無料塾は次のとおりです。

 

(1)上飯田児童館・ナイト児童館(毎週金曜日)

事務所近くの上飯田児童館では「ナイト児童館」と称し、中学生以上18歳までの子どもたちの居場所づくりを行っています。遊んでもいい、読書してもいい、自分の家のようにリラックスして過ごせる場所を目指しており、家庭や学校などに様々な困難を抱えた子どもたちも居場所を求めて毎週金曜日の夕方にやってきています。ユースサポーターや地域のボランティアとともに、ホウネットのメンバーも、卓球をしたり、他愛もない話をしつつ信頼関係を築きつつありますが、「本当は勉強したかった」「学校に行きたかった」という本音も聞かれることから、学習支援を始めようと考えています。

 

(2)寺子屋学習塾(7月開始、毎週2回開催)

名古屋市の「生活保護世帯の子どもの学習サポートモデル事業」に、北医療生協が北区の事業について受託しました。ホウネットの無料塾構想が北医療生協を後押しし、実現したものでした。ホウネットは、勉強を教える会場として相談センターを貸し出し、学習サポーターにホウネットの世話人が協力しています。また、上飯田児童館で行われている「ひとり親世帯の中学生向けの学習支援(名古屋市の事業)」にもホウネットは協力しています。

 

(3)日本共産党・民青同盟主催無料塾(4月開始、月2回程度不定期開催)

日本共産党・民青同盟主催の無料塾(塾に行きたいけど行けない中高生対象)について、ホウネットは相談センターを貸し出しています。

 

4 今後

18歳未満の子どもの貧困率は16・3%(2012年)となり、過去最悪を記録しました。生まれ育つ環境で将来が左右されない。子どもは社会の子どもとして社会全体の責任として育てていくことが求められています。

ホウネットが提起した貧困の連鎖を防ぐ取り組みは、地域に波紋を広げ、地域の共通の課題として取り組み始められています。無料塾の取り組みには多くの学生が学習支援サポーターとして参加しています。様々なつながりがきっかけで参加する学生や、学内の立て看をみて自主的に参加を申し込んできた学生もいます。「子どもたちの成長する姿をみるのがうれしい」、「貧困をなくすために何かしたい」と真剣に子どもたちに勉強を教えています。この学生たちの魅力的な姿に大人のサポーターも負けないようにがんばっています。

子どもの貧困対策の「大綱」が閣議決定されましたが、数値目標も設定されないなど問題があるものです。地域全体で子どもの貧困をなくすために、ホウネットは取り組みを続けていきます。

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