読書のしおり(12) ローズマリー・サトクリフ、フィリッパ・ピアス、C・S・ルイス
この3人はみなイギリスの作家である。サトクリフは歴史小説家として、ピアスとルイスはファンタジー作家として有名である。戦後作家として名をなした人達だが、その土壌はマザーグース(日本で言えば昔話)が根付いていて子供のころから想像力を豊かに育んできたのではないかと思う。
ルイスの代表作『ナルニア国物語』は、空想上の国ナルニアの誕生から死滅までをかいた7冊の物語である。善と悪、それをつくる者、守る者と奪う者との戦い、全能の神(この本ではアスランというライオン)を書いたイギリスらしい物語である。
サトクリフとピアスは中、高校生以上でないと理解がついていかないかもしれない。
サトクリフの本は、『第九軍団のワシ』『ともしびをかかげて』『太陽の戦死』など読み応えのあるものである。サトクリフは、子供の頃から足と手が不自由であるがその分想像力は豊かで物語の描写も細かく、引き込まれる。
『太陽の戦士』は、青銅器時代のイングランドの丘陵地帯に部族の人たちと一緒に住んでいたドレムという少年の話である。この時代一人前の戦士になるためには、武器を使え、オオカミをしとめることができなければならない。さらに新しく戦士となることを一族のものに推薦してくれる戦士が2人必要である。戦士になることができなければ、先住民とともに生活し、羊飼いになるほかない。ドレムは片腕しかない。ある日突然ドレムは片腕では戦士になれない、戦士にならなければ、一族の中で一人前の人間として生きていくことができないことに気がつく。弓が引けない。片腕で槍を使わなければならない。体で戦うときも片腕である。推薦してくれる戦士はいるのか?同じ若者でドレムを仲間として認めてくれるものがいるのか?そうした不安の中でドレムが一人前になるまでを映画を見るように読ませる。
ピアスの代表作は、『トムは真夜中の庭で』であると思う。ある夜、室内の柱時計が13を打つという不思議な現象が現れ、トムが庭に出るとハティという名前の少女と出会う。時計が13を打つ夜が来るたびにトムが会うハティは・・・。「時」を題材に考えさせられる作品である。
イギリスの作家として、このほかにケストナーや最近では『ハリー・ポッター』のJ・K・ローリングなどがよく知られている。児童文学の厚みを感じる。
2014/1/28 長谷川弘子