読書のしおり(11) 『橋をかける―子供時代の読書の思い出』美智子皇后
10月31日の朝日新聞の論壇時評で作家の高橋源一郎が書いた「皇后陛下のことば 自分と向き合って伝える」を読んだ時、同じことを思った人がいることに驚いた。
『橋をかける―子供時代の読書の思い出』は「国際児童図書評議会(IBBY)ニュ―デリー大会基調講演」をそのまま本にしたものであり、本でなくてもパソコンで検索でき、全文が読める。1998年のこの講演は全文が新聞に紹介され、これを読んだ時の感動は忘れ難い。私は、それ以来、美智子皇后のことばは目に留まる限り読む。
基調報告の中からその一部を抜き書きすると
今振り返って、私にとり、子供時代の読書とは何だったのでしょう。
何よりも、それは私に楽しみを与えてくれました。そして、その後に来る、青年期の読書のための基礎を作ってくれました。
それはある時には私に根っこを与え、ある時には翼をくれました。この根っこと翼は、私が外に、内に、橋をかけ、自分の世界を少しずつ広げて育っていくときに、大きな助けとなってくれました。
読害は私に、悲しみや喜びにつき、思い巡らす機会を与えてくれました。本の中には、さまざまな悲しみが描かれており、私が、自分以外の人がどれほどに深くものを感じ、どれだけ多く傷ついているかを気づかされたのは、本を読むことによってでした。
・・・読書は、人生の全てが、決して単純でないことを教えてくれました。私たちは、複雑さに耐えて生きていかなければならないということ。人と人との関係においても。国と国との関係においても。
子供達が、自分の中に、しっかりとした根を持つために
子供達が、喜びと想像の強い翼を持つために
子供達が、痛みを伴う愛を知るために
そして、子供達が人生の複雑さに耐え、それぞれに与えられた人生を受け入れて生き、
やがて一人一人、私共全てのふるさとであるこの地球で、平和の道具となっていくために。
ぜひ、全文を読んでほしい。特に、子育てをしている人々に。
私は、天皇制には賛成ではないし、国民の象徴が必要かどうかも疑問に思っているが、美智子皇后については、この基調講演を読んでから関心を持ってみている。
次回はこの基調講演に紹介されたもので、内容が語られなかった、ローズマリー・サトクリフ、フィリッパ・ピアス、C・S・ルイスの本を紹介する。
2014/1/06 長谷川弘子