読書のしおり(4)「ウォーリアーズ」
児童文学でファンタジーに分類される「ウォーリアーズ」がおもしろい。著者はエリン・ハンター。これは、4人の女性児童文学作家のペンネーム。日本語版では、ケイト・キャリーとボールドリーの2人のみのペンネームとして使われている。ビクトリア・ホームズとトゥイ・サザーランドも携わっているが日本語版ではまだ発行されていないためといわれている。英語版では第5期まで発行されており、現在もシリーズは続いている。(第1期から第4期まで各6冊、第5期は英語版では3冊目まで発行)日本語版は第3期の4までである。全米では100万部を超えるヒット作である。4人の作家の共同作品であるから、内容も矛盾がなくよくねられ、子供だけが読むには惜しい本である。
内容は単純明快である。第1期は飼い猫ラスティの成長記であり、第2期はその子供、第3期はその次の世代、ラスティの孫の話が続いている。
まず、第1期では飼い猫ラスティは子猫のとき猫の本能にめざめフェンスを超えて森に入る。サンダ―族の族長、ブルースターとサンダー族の戦士ライオンハートにサンダー族に入らないかと誘われる。飼い猫の暮らしからサンダー族に入ったラスティはサンダー族の見習いになり、新しく「ファイヤーポー」の名前を貰う。他の猫から飼い猫として馬鹿にされたり、無視されたりもするが、グレーポーやレイブンポーなどの親友もできる。ファイヤーポーが一族の中で活躍していく中で他の猫からも認められるようになる。
森の野生猫はサンダー族、ウインド族、リバァー族、シャドウ族の4つの部族からなる。身分や戦士の掟も厳格にある。身分は族長、副長、戦士、見習い、看護猫、スター族(死んだ猫)浮浪猫、日本足・毛なし(人間)怪物(自動車)など。名前も生まれた時、見習い、戦士、族長その身分に変わる時にその身分に応じて変わっていく。たくさんの猫が登場し、さらに名前も変わっていくので、次々発行されないためわからなくなって又読むことになる。戦士は一族のために自分の縄張りを守り、そのためには他の一族とも闘い、一族が飢えることのないよう狩りをし、その一族に忠誠をつくす。人間やあらいぐま、犬、そして森そのものものの破壊など大きな困難に対しては4つの部族が力をあわせてたち向かっていく。
猫の世界が描かれているのだが、友情、愛情、裏切り、嫉妬、欲望、人間の世界で起こることはあますことなく盛り込まれており、それが猫の掟の中でおこる。一族や他の部族を守ること、自分の気持ちと反する掟というもの、大きな困難に立ち向かうこと、良かれと思ってしたことが誤解を生むなど、子供が読めば子供なりの、大人が読めばそれなりのおもしろさ、悩みが共有できる本である。猫好きにはたまらない本だと思う。
英語が読めたらと思いながら、日本語版の発行を待っている。
2013/08/13 長谷川弘子