読書のしおり(2)池井戸潤vol.1
先回池井戸潤がマイブームと書いたのでもう少しくわしく書きたい。
独断と偏見で作品を3つに分類する。まず、痛快、爽快、おもしろいもの、2番目はこの題材前に新聞でみたことある事件または事柄について書かれたもの、3番目はよくわからない、おもしろかったのか、つまらなかったのか、最後まで読んだけどいまいちピンとこなかったのは自分の頭に問題があるのか悩むもの、である。だから、おもしろくて軽い本貸してといわれると1番目、なにか良かった本ない?と言われると2番目となる。
池井戸潤は銀行に勤めた後作家になっている。そのため銀行が舞台となっているものが多い。一番目の筆頭は「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」。主人公である半沢直樹が都市銀行に入行し、組織のなかで悪戦苦闘し、巧妙に仕組まれた不正を暴いていく。半沢と共に歯ぎしりしながら、「本来は性善説。やられたら倍返し。」という半沢になりきって頁をめくってしまう。でも最後までやり返すかというと相手の家族がみえて徹底的にはやりかえさない。個人対個人だからこの辺でいい。堺雅人が半沢役でドラマ化されるらしい。私のイメージでは半沢が相手を力ではいつくばらせる場面があるからもっとがっちりした体形なのだが、堺雅人という役者は好きなのでたぶんドラマも見ると思う。違う半沢が見られるかもしれない。
痛快なのは、「不祥事」。20代の若い花咲舞がトラブルをかかえた支店を回って業務改善を指導する。事務と人間観察と歯に衣着せぬ言動で、歪んだモラルと因習をメッタ切り。狂咲こと花咲が自分の正義感で上司にも銀行の査察官にも大企業からのあずかりものの御曹司である銀行員にも立ち向かって行く。出世欲や家庭のある男性行員にはとてもまねできない。胸がすく。「銀行総務特命」は「不祥事」よりもう少し辛口。銀行内部、(企業も同じ?)の腐敗と欲望、保身が渦巻く中を女性行員唐木田怜が奔走する。この他「かばん屋の相続」もいい。これは短編のあつまりの中の一編が本の題名になっていて、題名どおりの想像のつく展開だが、最後がいい。池井戸潤の作品にはどうしようもない人間(保身と欲にまみれた、上には弱く、下には強い)実に人間らしい人間が出てくるのだが、最後は人間捨てたものではないと思わされる。「7つの会議」も同様。これは東山紀之が主演でドラマ化される。他に「シャイロックの子供たち」「株価暴落」「果つる底なき」も一気に読める。
池井戸潤のファンは多いと思うので、他の人の意見も聞いてみたいものである。
2番目は、社会派ミステリーといわれるものであるらしい。これについては次回で。
2013/07/09 長谷川弘子