『ぷらっとほーむ』権利擁護の人づくり講座 に参加して10
2013年6月21日
「権利擁護の人づくり講座 第10回 成年後見制度を知る」
午前 名古屋市における権利擁護の推進に向けて
講師 弘田直紀氏(名古屋市社会福祉協議会権利擁護推進部部長)
午後 成年後見制度
講師 熊田均弁護士
午前は、名古屋市の委託補助で社会福祉協議会が運営主体となり、下記のとおり権利擁護体制を組んでいることについて話しがありました。成年後見分野 成年後見あんしんセンター、法人後見センター(独自事業)虐待防止 高齢者虐待相談センター、障害者虐待相談センター日常生活自立支援事業 権利擁護センター(補助事業)北部・東部・南部
今回は高齢者虐待相談センター、障害者虐待相談センター、成年後見あんしんセンター、成年後見利用支援事業について、権利擁護センター(日常生活自立支援事業)について話しを聞きました。
1.高齢者虐待相談センターと障害者虐待相談センター
高齢者虐待防止法や虐待種類に続き、通報について話がありました。高齢者虐待は閉ざされた環境で発生し発見しづらいため周りの目が大事であること、市は通報しやすくする風土づくりとして通報者が特定されないよう気をつけながら「自然な形で関与」(例えばまず家庭訪問)するようにしているそうです。
通報を受けたら市町村と連携協力する団体と共に高齢者の安全確認と事実確認行います。具体的には、介護保険加入者が多いのでその関係先と協力しながら事実確認をしています。
高齢者虐待の現状(H23年データ)をデータ分析すると虐待受けるのは「高齢の女性で認知症あり」の方が多いです。高齢者虐待の背景には、養護者の介護疲れや認知症への知識不足、希薄な近隣関係などがあるため、養護者への支援をしていかないと虐待防止にはならないと話しがありました。
養護者による高齢者虐待の相談窓口は、高齢者虐待相談センターと区役所支所、いきいき支援センターです。要介護施設従事者による高齢者虐待の相談窓口は名古屋市健康福祉局介護保険課指導係です。支援ネットワークとして上記の窓口の他、民生委員、社会福祉協議会、警察、弁護士等、老人福祉施設等、サービス事業者、介護支援専門員、医療機関等、スーパーバイザー(学識経験者・精神科医・弁護士等)と連携し、ネットワーク会議でそれぞれが役割分担をしています。例えば虐待が見受けられる場合、行政が指導、ケアマネらが支援するというように、問題を根本的に解決ため今後どうしたらよいかを連携して対処するそうです。ネットワークの連携が重要だと改めて感じました。
障害者虐待相談センターも同様のネットワークがあると紹介がありました。
2.名古屋市の成年後見あんしんセンター事業内容について
事業内容は下記の通り。
1.成年後見制度に関する専門相談・申立支援
2.成年後見制度に関する広報・啓発
3.市民後見人候補者養成研修事業
4.市民後見人候補者バンクの設置・運営
5.市民後見人の受任調整
6.市民後見人の後見活動への支援及び監督
7.成年後見制度に関わる機関・団体との連携
8.市長申立事務(戸籍調査及び申し立ての決定に係る事務除く)
市民後見人は、専門職後見人の不足を補う代替や補完ではなく「市民という専門性」(同じ市民という身近な関係)を活かした権利擁護活動です。名古屋市では、今までに8件選任されています(内2人は死亡)。類型は全て後見、全て名古屋市社協が成年後見監督人になっています。市民後見人を含む新たな地域の支え合いづくり、ネットワークをつくっていると話しがありました。また、名古屋市の市長申し立て件数は年々増加し、H21年度は25件だったのが、H24年度は68件だったと報告がありました。
3.権利擁護センター(日常生活自立支援事業)
権利擁護センターでは無料で生活相談と法律相談を行っています。
また、本人に契約する能力が残っていて本人の利用意志があればできる契約として1知的障がい者2精神障がい者3認知症高齢者を対象に下記サービスがあると紹介がありました。
金銭管理サービス センター職員による支援計画など作成、通帳等の整理。生活援助員による普通預金通帳と印鑑の管理、支援計画に定めた定期的な訪問や生活費の出金とお届け、福祉サービスの相談と手続き代行など。利用料 1回:1,000円。
財産保全サービス センター職員による支援計画など作成。生活援助員による支援計画に定めた定期的な訪問、福祉サービスの相談と手続き代行。銀行の貸金庫に定期預金や証書、実印など保管。利用料 1か月:250円)
午前の部の最後に、成年後見制度と日常生活自立支援事業の限界や役割でないことについても話しがありました。医療同意をめぐる課題については、午後の熊田弁護士のレジュメを引用します。
<医療手術同意をめぐる混乱の解決に向けて>
(1)現在の状況: 法律がない状態、法律制定に向ける議論の必要性
(2)とりあえずの手法
1本人の意志(推定意志も含む)を出来る限り聴取する
2必要な範囲での医的侵襲行為に留める
3本人の健康状態の確認(各種検査等)
4最後は…医師の合理的な裁量−複数の目
午後の部「成年後見制度?」は社会的背景や制度説明がほとんどでしたので上記の課題についての報告のほか、最後のまとめにて成年後見制度は民法(私法)から福祉法に変容しつつあると話しがあったことのみ報告します。これは、法制度や解釈の限界はあるものの、財産管理中心から生活支援への流れがあるということでした。高齢者らの財産や人権守ることはもちろん、その方らがいかに自分らしく生活を継続していけるかを支援していく体制が重要なのだと感じました。支える側がいつかは支えられる側に変わります。自分が支えられる側になったときにどのように制度や支援体制が確立しているか、関心と知識を持つ必要があると感じました。