文字サイズ 標準拡大

事務所だより

『ぷらっとほーむ』権利擁護の人づくり講座 に参加して5(その1)

2013年4月17日

「権利擁護の人づくり講座 第5回 生活相談の専門知識」に参加して(その1)

弁護士 鈴木哲郎

3月26日に開かれた第5回講座のテーマは、「生活相談の専門知識」でした。
1 午前の部「活用できる制度、病院との契約について」
講師:名古屋第二赤十字病院医療社会事業課山田優作氏
(1)社会保障制度の概略
冒頭で、まず社会保障について概略的な説明がなされましたが、その中で、現在の社会保障政策が、民主党時代の「共助」から自民党的な「自助」の精神にシフトしているとの指摘がありました。「助け合い」や「社会による扶養」という理念ではなく、「自分の身は自分で守る」ということが原則の政策に変わってきているということです。もっとも、現在の安倍内閣は、個人を単位として考えていた小泉政権に比して、(旧来的な)家族の機能を重視しているようです。
(2)医療保険のルール
ご存じのように、75歳以上の方は後期高齢者医療保険に加入となります。「長寿医療保険」という言葉もありましたが、あまり普及していないようです。65歳以上で一定の障害があれば、後期高齢者医療保険とそれ以外の保険を選択することができます。
医療保険としてどのような給付が受けられるのか。この辺りは、成年後見人など職務において非常に大事なところです。通常の医療給付(原則3割負担)のほか、傷病手当金や出産手当金、出産育児一時金、埋葬料(一律5万円)などがあります。先日、私が後見人を務める被後見人の方が亡くなったときに、確かに5万円の支給を受けられました。
その後、高額療養費に関する説明が続きましたが、70歳未満か70歳以上かで扱いが大きく変わってきたり、高額介護との合算医療費制度があったりと、入り組んでいて一度に理解することは正直困難です。ここは専門家の助けが必要なところでしょう。
さらに、各種の医療費助成制度(障害者総合支援法による更生医療、育成医療などのほか、特定疾患(難病)に対する医療給付、名古屋市の福祉給付金)の説明もありました。名古屋市では、70歳以上で、寝たきりや認知症で3か月以上日常介護を受けている方などが福祉給付金(医療費助成)が受けられますので、かなりの方が対象になりそうです。
(3)措置から契約へ
最後にまとめです。「救命救急センターを抜けると契約社会であった」と、講師から突然川端康成のような言葉が飛び出しましたが、以前の「措置」の時代から、現在は「契約」の時代に変わりました。病院も施設も、自らの意思で選択し、契約することが求められます。
体力や判断能力の衰えた方が、果たして満足に契約をすることができるのか。「契約の時代」に取り残されてしまう人が必ず出てくるのではないのか。こうした危機感から、成年後見人として私たち弁護士のような職種が積極的に関わっていくことが期待されています。
最後に、受講者からの「制度について行政以外で信頼できる相談機関はないか」という質問に対し、「病院のソーシャルワーカーなどの人的資源は限られている。本講座の受講者のような市民の中から、制度の知識が普及していくことを期待している」と、勉強心をくすぐる激励がありました。

このページの先頭へ