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事務所だより

『ぷらっとほーむ』権利擁護の人づくり講座 に参加して3

2013年3月7日

地域包括ケアの現状(福祉編)の講座を受講して

椙山女学園大学 人間関係学部 人間関係学科

金城 柚香

【今回の講座の主な内容】

午前の部:港区東部いきいき支援センター センター長 吉川琢夫氏による地域包括ケアの現状

午後の部:名古屋市社会福祉協議会権利擁護推進部 次長 平坂義則氏による地域の関係機関連携(ケース会議の開き方)

 午前の部の地域包括ケアの現状では、高齢者の個別ニーズを把握し、様々な専門職との連携と地域住民の参加推進が不可欠であるということを学んだ。

 このような「地域包括ケア」という言葉が誕生した背景には、「措置から契約」へと変化したことがあげられる。日本は、1960〜70年代にホームヘルプサービス、ショートステイ、デイサービスが開始され、その後ゴールドプランや福祉関係八法改正により、在宅サービスが法的に位置づけされた。しかし、これらはすべて措置で行われていたため、ヘルパーを派遣してもらう際や、デイサービスを利用する際には利用者に選ぶ権利はなかった。そのため、2000年より介護を受ける側である高齢者の自己決定・自立支援を目指した制度、「介護保険制度」がスタートし、利用者本位の支援が受けられるようになった。このような契約方式に変わったことにより、利用者のニーズに合った支援ができるようになったが、何もかも自分で契約をしなければならないため、判断能力のない人には意味のない制度となってしまい、その結果、制度から漏れてしまう人を生み出すことになってしまった。

 そこで、社会福祉法改正によって、制度化されたものにとどまらず、非制度な活動も含めた総合的な福祉推進の方向性が示され、地域福祉すなわち地域包括についても法律上明記された。そして、2006年には介護保険法が改正され、高齢者のニーズに応じて切れ目なく提供される包括的かつ継続的なサービス体制、いわゆる地域包括ケアシステムという考えが生まれた。今後は地域福祉の一つの方向性として、制度から漏れる者や孤独死や孤立死などの社会的孤立をなくしたり、要援護者が社会参加・自己実現できる仕組みづくりをしたりするなど地域包括ケアシステムの構築をしていくことが重要である。

 午後の部の地域の関係機関連携(ケース会議の開き方)では、セルフネグレクト(薬を飲まない、食事をとらない、介護サービスを受けないといったような自己放棄)を事例とし、どのように解決していくべきなのかということを学んだ。

 特に現在は、片付けが全くされていないゴミ屋敷に住んでいる独居高齢者が多く、このような問題を発見した場合は、専門職と地域住民とが連携・協同をし、アプローチをしていくことが大切であると言える。これらが連携していなければ、サービス等を用いてゴミを片付けてもらい、部屋を綺麗にすることができたとしても、結局はただ片付けただけで根本的な問題を解決することはできない。しかし、サービス等と共にホームヘルパーが週に何度が訪問することによって高齢者に片付けをするきっかけを作ったり、民生委員が訪問した際に観察をしたり、地域住民がゴミをしっかり出ているかどうかを確認したりすることによってその後の状況も把握し、継続的な支援を行うことができる。

 そして、このような体制を作り上げるには地域ケア会議を行うことが大切であると考えられる。この会議を行うことによって地域の団体や機関が共に共通の理解を得て、多職種協同により、それぞれの専門性を活かしたアセスメントをすることができ、その結果、利用者のQOLの向上や自立支援に資するケアマネジメントを実現することができる。このように、普段異なった専門性や価値観を持っている者同士であったとしても、それぞれの専門性を活かしつつ同じ方向性を持つことで、様々なニーズに対応することができると言える。

【終わりに】

 現在の日本は高齢者人口の割合が年々増加している。そのため、様々なニーズが誕生し、公的な制度だけでは対応できないことも多くある。今後は、そのような制度から漏れてしまう人が出ないように地域包括ケアシステムを構築し、地域住民と専門職が協同して福祉を行っていくことで、個々のニーズに対応していけるような社会を作っていくことが大切なのではないかと考える。

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