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事務所だより

若者に読んで欲しい、サイバラが語る「カネ」の話1 豆電球No.80

2009年4月23日

若者に読んで欲しい、サイバラが語る「カネ」の話1

今、売れっ子のイラストレーター、西原理恵子の、「この世でいちばん大事な『カネ』の話」(理論社)は、本人の自伝的なエッセイである。一時間ほどで気軽に読める本だが、中身はしっかりした本である。実にシンプルでたくましい西原理恵子的な生き方に改めて共感する。
西原理恵子は、清水由範の文庫本の挿絵を描いていて知ったのだが、最近は毎日新聞の連載漫画「毎日かあさん」が大当たり。自分でも「絵はうまいとはお世辞にも言えない」という通りであるが、生活の一こまを切り取った題材のおもしろさ、歯に衣着せない物言い、時にしシモネタが混じるギャグ等が受けているようだ。

まず、タイトルがいい。「カネの話」という「カネ」という文字を背表紙に見ただけで、品格がない本だと思う向きもあるかもしれない。それを堂々と、一番大事なのは、カネの話なんだ!と啖呵を切っているところがいい(一番大事なのは「カネ」ではなく、「カネの話」と言っているところに注意)。

この本を、若い世代の方々に、女性に、そして、派遣切りや不安定・低賃金労働のただ中に置かれ、不安を抱えている人たちに、是非、読んでもらいたいと思う。
あっけらかんと自分の貧乏を語りながら、あけすけに自分をさらけ出しながら、さりなげなく若者に励ましのメッセージを送っている。多少紙幅を費やして中身を紹介することにする。

高地の漁村で生まれたサイバラのカネとの出会いは、漁師がポケットにねじこんでいた「魚と血の匂い」が染み込んだカネである。貧乏だったが、みんなが貧乏だったのが、「だあれも貧乏に気が付かなかった」と言う。これは、今の若い人には、すとんと落ちない感情かもしれない。サイバラと私は6歳違うが、その感覚は私には理解できる。私にとってのカネは、仕立屋をやっていた父と母が毎日、遅くまで針仕事をしてお客さんからいただくカネであった。
その後、サイバラは、近くの工業団地の町に引っ越し、再婚した父が自殺する18歳までそこで生活するのだが、思春期と重なるこの時期、貧困がたんなる「お金が足りない」ということだけでなく、夫婦げんかと暴力を生みだし、無知と堕落、退廃を生み出すことをサイバラは知る。大人たちの貧困は、子供に連鎖する。シンナー、万引き、家出。サイバラも不良仲間の中にどっぷり浸る。

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