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事務所だより

犯罪被害者の人権に関する法改正について2 豆電球No.29

2007年7月24日

このたび行われた、犯罪被害者の権利に関する一連の法改正の骨格は、次の通りです。

1 犯罪被害者が刑事裁判に参加する制度
一定の犯罪に限定してですが、犯罪被害を受けた場合、刑事裁判に当事者として参加する道が開かれました。
殺人事件等故意の犯罪行為により人を死傷させた罪、交通事故によ人を死傷させた罪等一定の犯罪について、被害者、遺族が申し出た場合には、裁判所の決定により、刑事裁判に当事者として参加できる。
その場合、被害者等は、公判期日に出頭し、裁判官の許可を得て、証人に対し犯罪の情状に関する事項について尋問することができ、被告人に対する質問もできる。
また、公訴事実の認定または量刑について、検察官の論告・求刑に引き続いて、犯罪事実の認定、刑の量定等について意見を述べることができる。
2 刑事手続において犯罪被害者などの氏名の情報を保護する制度の創設
刑事裁判は公開の法廷で行われるため、審理の過程で、犯罪被害者のプライバシーが侵害されることが懸念されていましたが、この点についての手当がなされました。
強姦事件等で裁判所が相当と認めた場合には、起訴状の朗読等の訴訟手続について、被害者の氏名を匿名にして行うこととする。
3 犯罪被害者が加害者に対して損害賠償請求をする際に刑事裁判手続の成果を利用できる制度の創設
犯罪を受けた被害者、遺族は、当然、刑事裁判とは別に加害者に対し、その受けた経済的精神的損害の賠償を求める権利があります。しかし、そのためには別途、損害賠償請求訴訟を提起しなければならず、そのために必要な費用の負担が求められていました
今回の法改正により、故意の犯罪行為により人を死傷させた罪等の刑事裁判において(交通事故等、過失に基づく犯罪行為には適用されないことに注意)、被 害者や遺族は、その刑事裁判が係属している裁判所に対し、その刑事裁判の弁論が終結するまでの間に、損害賠償命令の申立をすることができ、その申立が行わ れた場合において、刑事裁判で有罪判決が言い渡された場合には、裁判所は直ちに損害賠償命令の申立に関する審理期日を指定することになります。
その上で、裁判所は、原則として4回以内の審理期日において審理を終結し、命令を発します。当事者は、その損害賠償命令に対しては、2週間以内に異議の 申し出を行うことができ、その期間内に異議の申し出がなされない場合には、その命令は確定判決と同じ効力を持つことになります。異議の申し出があった場合 には、通常の民事裁判に移行する。審理中に、当事者が通常の民事訴訟手続に移行することを求めた場合も同様であす。
4 刑事訴訟における訴訟記録の閲覧・謄写について
犯罪被害者は、これまでも刑事裁判の記録の閲覧、コピーができましたが、法改正により新たに同種余罪の被害者(窃盗犯等では、起訴された事件以外にも同種余罪が多数あることがしばしばです)も、刑事裁判記録の閲覧、謄写ができます。

このように、今次の国会ではかなり重要な法改正がなされた。しかし、制度改正も重要だが、一番重要なのは、心のこもったケアであり、励ましである。ま た、補償面では、犯罪被害者の補償につては、最近、犯罪被害者給付金の相当程度の増額はなされているが、一層充実する必要があろう。加害者に十分な支払い 能力がない場合が多く、十分な民事賠償を受けることが困難であることが多い。法曹が、犯罪被害者に対し、それぞれの立場で、その人権保障のために努力すべ きである。

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