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事務所だより

国民投票法案の国会審議をどう見るか2 豆電球No.21

2007年4月27日

国民投票法案の国会審議をどう見るか2

審議中の国民投票法案の最大の問題点が、最低投票率が明記されていないー国民の少数意見で憲法改正がなされる危険性があるーという点にあること は、前回述べた。日本国憲法は、自由と人権、民主主義、恒久平和という「人類共通の普遍的理念」に基づくことを宣明した上で、憲法改正については厳格な手 続きを定めているものであり、「硬性憲法」と言われるものである。憲法改正手続の発議には国会の3分の2以上の賛成を必要としているのもその顕れである が、国民投票についても、国民の少数意見による改正を想定しているとは到底考えられない。最低投票率の明記は不可欠であると考える。

法案の重大な問題点に、公務員、教育者の国民投票運動の自由が制約される危険性がある、ということがある。この点は、先日(25日付)朝日新聞朝刊で取り上げられている。
自民党の修正案では、公務員の政治活動の自由に対する配慮を行うということ、刑事罰は課さないという点は盛り込まれているが、国家公務員法102条1項、人事院規則14−7や教育公務員法の適用除外を明記していない、という点に重大な問題がある。
この点は、国会審議でも取り上げられているようだが、審議内容で不満なのは(議事録を精査している訳ではないので、新聞報道で聞く限りでは)、そもそ も、公務員の政治活動を包括的に禁止、規制する国家公務員法や人事院規則の上記諸規定が、国民の言論、表現の自由を保障した日本国憲法21条に反する違憲 規定であるという議論が、殆ど聞かれないということである。
同規程は、1948年に占領軍の押しつけにより、導入されたことは周知のところである。
人事院初代総裁の浅井清氏は、GHQによる「強制」があったことを著作の中で述べており、郵便局職員の政治ビラ配布に関する猿払事件一審判決(68年) の中でも、「官公庁労働組合の反政府的政治活動が活発になったのを憂慮した占領軍総司令部の強い示唆により、国会での独自の審議が許されない状況下で作ら れた条文」と認定している。大久保史郎教授(立命館大学)も、「アメリカが冷戦政策を始める転換の時期であり、マッカーサー書簡と政令201号、これに基 づく国公法改正は、占領政策転換の産物だった」と述べている。
同規定の実質的根拠については、行政の中立性を保障するためである、と言われている。しかし、政策決定に関わる公務員か否かを問わず、機械的な労務を提供する公務員を含めて全面的に政治活動を禁止する必要はない。
況や、事は、国家の基本的在り方を決定づける憲法改正なのである。そのために数百万人の公務員が自分の見解を表明したり、市民にアピールすることが許されない等ということが、あって良い筈はないではないか。
参議院では、特に野党の国会議員には、この点を是非、強く主張して貰いたい。
*国家公務員法102条1項
「職員は、政党または政治的目的のために、寄付金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らかの方法をもってするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない」
同法110条 3年以下の懲役または10万円以下の罰金
人事院規則14−7(1947.9.19施行)
「6項 政治的行為の定義
7号 政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し、編集し、    配布し又はこれらの行為を援助すること
13号 政治的目的を有する署名又は無署名の文書の配布」

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