コナン君の裁判員制度問答No.8 豆電球No.67
2008年8月19日
コナン君の裁判員制度問答No.8
コナン オリンピックは、いよいよ終わりに近づいた。星野ジャパンが金メダルを取れるといいな。
長谷川 卓球の福原、平野が残念だったね。柔道の塚田選手の銀メダル、感動的だった。飫肥を緩めに結んで、時間を稼ぐ老獪な中国の選手を相手に真っ向勝負で挑んでいった、潔い日本柔道だった。
コナン また女ばっかり。さて、前回の続きを頼むよ。
長谷川 裁判員制度導入が刑事裁判全体を大きく変える可能性があるという第3の話の続きだった。
その?。裁判員制度の導入は、様々な面で影響を与え始めている。
例えば、「わかりやすい裁判」の実現。憲法で「裁判の公開」が保障され、刑事裁判は誰でも傍聴できることになっている。しかし、実際には、むつかしい法 廷用語が飛び交い、傍聴していてもむつかしくて理解できないという意見が強かった。 裁判員は一般市民だ。だから、裁判員を説得するために、法廷での言葉 使いを平易なものに変えていこうという取り組みが始まっている。パワーポイント等の活用も進みそうだ。
また、些か細かいと思われがちだが、大事な点がある。被告人の服装のことだ。拘置所に収容されている被告人の服装を見たことがあるか。
コナン 先日、窃盗事件の公判を見たが、甚兵衛のような服にサンダル履きだった。手錠をかけられて法廷に入廷してきた。
長谷川 自殺防止の必要からベルトやネクタイの着用を認めな いということもあるけど、拘置所、代用監獄から移送される被告人の服装は、如何にも罪人っていうイメージがつきまとう。先日の新聞記事では、どこかの裁判 所が、裁判員の予断の防止という観点から、被告人に公判時にネクタイ着用を認めることを検討しているという記事が出ていた。
コナン なるほど。そんな点にも影響が表れているのか。
長谷川 「外からの風が入る」ということは、いろいろな悪弊を正すことになることが多い。裁判所の場合は、余りに市民の目から隔絶された世界であり過ぎたということだろう。
最近、無罪判決が増えていると言われている。また、保釈率が上がっているという指摘もある。前者は、裁判員制度の導入を前に厳格な証明を重視するように なった影響ではないか。後者については、裁判員制度になると、被告人の当事者としての地位が重視され、弁護人との打ち合わせ等を十分に行う必要が出てくる が、その影響ではないか、と指摘されている。これらについては、裁判員制度との関連の有無を含めて、もう少しその動向を注視する必要があるのではないか。
「裁判員制度になったら日本の刑事裁判はこう変わる」の第4。それは、裁判の公開という原則に関わる。
裁判は、公開の法廷で行われるということが憲法で保障されているということは、前回話したよね。日本国憲法82条は、「裁判の対審及び判決は、公開法廷 で行う」と定めている。ここで言われているのは、対審すなわち公判と判決期日の公開にとどまる。今回の裁判員制度は、これを一歩進めて、評議についても、 限定的ではあるが、公開することにつながる。
これまでは、裁判官が、有罪か無罪か、どの程度の量刑とすべきかということを決める時、それがどのようなプロセスで行われるのか、どのような評議が行われているのか、全くベールに包まれていた。それが、限定的にせよ、市民代表に公開される意味は大きい。
コナン でも、裁判員には、守秘義務があるんだろう。評議の秘密を一生、守らなければ刑罰があると聞いている。これで評議が公開されている、と言えるのかな。
長谷川 私が、「限定的に」「市民代表に対して」公開されて いるというのは、その点を意識している。裁判員のプライバシーも守る必要があるし、裁判員が自由に意見を述べたりすることを保障する必要があることは理解 できる。ただ、刑罰が科せられたりするというのは、問題があると思う。この点は、是非、改善を求めていくべき課題だろう。