コナン君の裁判員制度問答No.7 豆電球No.66
2008年8月12日
コナン君の裁判員制度問答No.7
コナン 北京五輪は盛り上がっているね。買ったばかりの液晶テレビでバッチリ見れる。
長谷川 我が家はブラウン管テレビだ。3年後に今のテレビが 使えなくなるという総務省の方針は、納得できない。だいたい膨大なゴミが出るじゃないか。でもオリンピックはいいね。柔道の中村美里ちゃんのファンになっ てしまった。卓球の愛ちゃん、競泳の柴田亜衣ちゃん、早く見たいな。
コナン 女子選手ばかりだがね。
長谷川 「裁判員制度になったら日本の刑事裁判はこうなる」の第3。
それは、日本の刑事裁判全体を大きく変革するきっかけになるというこだ。刑事裁判は、捜査から始まって、公訴の提起、公判前準備手続、公判、判決と繋がる一連の手続きだが、裁判員制度の導入によって、それが大きく変わる可能性がある。既に、その芽が出ている。
コナン 具体的には?
長谷川 余り専門的にならない範囲で、単純化して箇条書きにして話すことにする。
?捜査の在り方への影響
既に一部の刑事事件で試行が始まっている「取り調べの可視化」って聞いたことある?
コナン 新聞で見たような気がする。X線でも使うのか?
長谷川 被疑者の取り調べの状況をビデオ録画するということだ。まだ、一部の試行に過ぎないが、大きな前進だ。
被疑者をパクり、代用監獄という密室で、朝から晩まで取り調べを行い、ぎゅうぎゅう言わせて自白を取る。これが捜査の基本だった。その過程で、虚偽の自白を強要されたり、警察の筋書に沿って事件の性格や内容が歪められることが大きな弊害だった。
こうした取り調べで虚偽の自白に追い込まれた被告人が公判で無実を訴えても、「調書の末尾に『以上について読み聞かせを受け、相違ないことを確認します』として署名拇印されているじゃないか!」と一喝されていた。
コナン 松山事件や免田事件といった冤罪事件の話、聞いたことあるよ。
長谷川 さすが、○△□コナン君だ。
そうした場合、弁護側の請求で、取り調べに当たった捜査官の証人尋問が行われていたが、捜査官が自白の強要や誘導を認める訳はない。だから、これを覆すことは非常にむつかしかったんだよ。
さらに言えば、これが日本の刑事裁判の長期化の一つの原因だった。延々と捜査官の尋問が何度も行われる。
最近、裁判官の中には、「自白が任意に行われたことは検察官に証明責任がある。録画等によって立証できなければ自白調書の証拠としての価値は認められない」という意見も出てきている。
コナン でも一部の録画ではダメじゃないのか。「良いとこ取り」になってしまう気がする。
長谷川 その通り。日弁連は全面的な録画の実施を求めている。ただ、一部の録画が無意味と言うべきではない。実施しながら、その範囲の拡大をめざすべきだ。
?検察官手持ち証拠の開示
検察官は、被告人に有利な証拠を法廷には提出しない。どういう証拠を出すかどうかは検察官の腹一つだった。文字通り、証拠の「良いとこ取り」が横行していた。証拠開示命令の制度自体がなかった。
裁判員制度導入と同時に、証拠開示に関する規定が整備され、充実された。 それまでも証拠開示は、裁判官の訴訟指揮権に基づいて行われていたが、明確な法的根拠がなく、また開示の範囲も不明確だったんだ。それが、弁護人が請求す れば、検察官は開示に応じなければならなくなった。これも、裁判員制度の導入の影響だ。裁判員制度では、公判前に争点整理を行い、その上で、裁判員を交え た審理を行うことになる。そのためには公判前に検察官の手持ち証拠の開示が必要になる。
コナン 証拠の開示とか、取り調べの可視化は、なるほど改善かもしれない。でも、それはそれとして、裁判員制度の導入とは別問題であり、職業裁判官の裁判を続けながらでも同じような改革ができたのではないか。
長谷川 それは、全くの机上の空論だ。50年かけて出来なかった。裁判員制度という根本的な制度改革、原動力があって初めて実現したことは明白だ。