コナン君の裁判員制度問答No.4 豆電球No.62
2008年7月7日
コナン君の裁判員制度問答No.4
コナン 構成要件に該当する事実の有無や行為はわかったけど、殺人事件や通り魔事件で、被告人に責任能力があるか否かが問題になって、精神鑑定が行われるよね。
精神科医でもない素人が判断のしようがないんじゃないか。
長谷川 違法な行為によって結果が発生した場合でも、責任能 力がなければ処罰できないと刑法は定めている。例えば、未成年。14歳未満の子供には責任能力がないと定めている。物事の善悪、因果関係、結果の重大性等 を認識、判断する能力がない以上、行為について非難できず、責任がないと考えるからだ。
これと同様に、幻覚や幻聴、精神疾患等によって、物事の判断が出来る能力がないと認められる場合には、責任能力がないとされる。先日、死刑が執行された 女児連続殺人事件の死刑囚、最近では秋葉原の連続無差別殺傷事件でも精神鑑定が行われている。精神疾患により物事の是非を判断して自己の行動を制御できる 能力が欠落している、あるいは不十分であると判断されるのか、判断能力はあるが性格・気質の異常や偏執等が寄与しているだけなのか、判断は容易ではない。 これは、裁判官でも同じだ。同じ被告人について複数の精神鑑定が行われ、その結果が相互に異なる場合も少なくない。また、裁判官が鑑定結果と異なる判断を することも見られた。責任能力の有無の判断は、医学的な診断を基礎としつつも、被告人に責任を問えるか否かという法的評価であり、鑑定医の判断に拘束され ることなく、裁判所が独自に判断できる。
この点について、先日、最高裁は、「鑑定の手続等に特段の問題点がなければ、鑑定結果を尊重すべき」との判決を出したが、これは裁判員制度の実施を睨んだ判断ではないかと言われている。
責任能力についても、検察官が証明責任を負っているから、裁判員に対し、被告人が責任能力があることを説明し、説得しなければならない。おそらくパワー ポイント等を用いながら解説することになるだろう。それでも責任能力があるか否か確信が持てないということになれば、無罪とする外はない。
コナン 違法性とは?
長谷川 犯罪の成立要件の一つなんだけど。例えば、人を傷つ ければ傷害罪になる。しかし、医師の手術は、人体にメスを入れて傷害罪にならない。ボクシングで対戦相手を殴りつけて怪我をさせても(時には脳内出血で死 に至ることもある)罪には問われない。これは、これらの行為に違法性がないからだ。
裁判員制度の対象となる犯罪で違法性が問題になるのは、正当防衛ぐらいだろう。自己または第三者の生命、身体を守るためにやむをえず行った行為により相 手に危害を加えた場合には、違法ではない。橋の上で強盗に襲われた人が相手を川に突き飛ばして強盗が溺死したとしても、違法性はないとされる。
被告人または第三者の生命、身体に対する加害行為、切迫した危険があったか否か、防衛のために取った手段が過剰ではないか等が論点となる。この判断も特 に六法全書に書いてある知識が必要という訳ではなく、具体的な事実、証拠をどう評価するか、経験則と社会常識に基づいて判断される事柄なんだ。