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事務所だより

ウェルカム、裁判員制度!豆電球No.83

2009年5月21日

ウェルカム、裁判員制度!

今日から、市民が刑事裁判に参加する裁判員制度が施行されました。同時に、検察審査会の機能の強化、被疑者国選弁護人の対象事件の拡大も実施に移されました。
裁判員制度については、アンケートでも6割の国民が「必要なし」と答え、7割が「裁判員になりたくない」と答えるなど、評判は全く芳しくありません。国民に新しい負担をしいるものですから、反対が多いのは当然ですが、落城寸前と言われる麻生内閣並の支持率ということでから、心許ない状態でのスタートなりました。
このような制度が定着するためには、国民の支持と協力が不可欠です。
最高裁判所を始めとする法曹関係者は、国民の声に耳を傾け、制度導入の意義を広く普及するとともに、その弊害や問題点を是正していくことが求められています。

裁判員制度は、これまでプロフェッショナルに独占されていた刑事裁判に国民が参加するという画期的な制度改革です。憲法では、裁判の公開が保障されていますが、裁判官の評議はベールに包まれており、その心証形成の過程は極めて不透明でした。また、そもそも公判が形骸化し、捜査官が作成した供述調書が裁判の主役の位置を占め、公判は半ば儀式化していたとさえ言われました。一般の方は、供述調書と言うと、客観的に関係者や被疑者の言い分を正確に記録しているのではないかと思っている向きもあるかもしれませんが、私に言わせれば殆ど捜査官の作文と言ってもよい代物です。また、官僚的な裁判官任用制度と相まって、裁判官が無罪判決を出して上級審で破棄されることを過度に恐れたりする傾向が生まれましたむ。こうした中で、少なくない冤罪事件が発生しました(冤罪発生の温床は主として捜査段階での問題が大きく、職業裁判完成度や従来の公判運営だけに咎を求めるわけではありませんが)。
刑事裁判への市民参加は、このような「官」に独占されていた刑事裁判に風穴を開ける、画期的な制度改革ということができます。
もちろん、今回の裁判員制度に問題がない訳ではありません。制度、システムには一長一短が避けられないという一般論に解消できないような問題点もあると考えます。
こうした問題点を改善していくことは、制度の定着のためにも不可欠です。
私が考えている問題点と改善案は、次の三つです。
?死刑判決については、事実認定について単純多数決ではなく3分の2以上の多数決を必要とする)。
?量刑については、当分の間、裁判員の意見は参考意見として、参審制的運用とする
?裁判員の守秘義務については、他の裁判員の氏名を公表したりする等の限定的な場合を除いて、刑事罰を適用しない。
こうした問題点を克服しつつ、刑事裁判への市民参加が定着するようにしなければならないと考えます。日本社会が、問題点があるからといって制度を流産させてしまうような、いわば「盥と一緒に赤ん坊を流してしまう」ような愚を犯さないようにするために、法律家が謙虚に国民の声に耳を傾けなければなりません。
豆電球の読者の皆さんの中にも、「裁判員なんてとんでもない」という意見が多いかと思いますが、今一度制度の趣旨を汲み取っていただき、「いっぺん、やってみよまい!」と思っていただけるように、今後も事務所のホームページ等で取り上げていこうと考えています。よろしくお願いいたします。

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