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知って得する法律情報

労働(4)労災

2013年10月4日

労働(4)労災

1.今回は、労働災害について取り上げます。

 労働者が業務上負傷し、疾病にかかり、または死亡した場合には、労災補償制度の適用を受けます。労基署により「労災」であると認定を受けると、療養補償、休業補償、障害補償や遺族補償等の給付を受けることができます。

 そのため、労働者が負傷等をした場合には、その負傷や疾病が「業務上」生じたものといえるか、いいかえれば「業務起因性」があるかどうか、が重要なポイントになってきます。

2.具体的事例

 それでは、通勤時の負傷についてはどうでしょうか。

 Aさんは、午後5時55分頃から、会社の最寄り駅近くの飲食店で、管理者会を1時間程度行い、その後引き続いて懇親会を約55分程度行いました。終了後、Aさんは午後8時過ぎの電車に乗って自宅最寄り駅まで帰り、そこから普段通りに自転車で帰宅する途中、転倒して頭を打ち、その怪我がもとで亡くなってしまいました。

 この場合、Aさんの遺族は、遺族補償給付を受けることができるでしょうか。

3.通勤災害の判断

 通勤災害としての「通勤」に当たるためには、労災補償法上、(1)就業に関し、(2)住居と就業の場所を、(3)合理的経路及び方法により往復することが要件となっています(法7条)。

 Aさんは、飲食店での懇親会の帰りに転倒しているため、このうち(1)と(2)の要件にあたるかどうかが問題となります。

 同様のケース(JR東日本白石電力区事件)について、裁判所は、Aさんの参加した管理者会と懇親会は主として会社の業務に関する話し合いがもたれた場であったこと、懇親会の時間が約55分にすぎないこと、懇親会では簡単な料理とアルコールが少量だけ出され、費用も一人2000円にすぎない こと等の理由をあげて、会合からの帰宅は、「就業の場所」から「就業に関し」て帰宅するものであった、としてAさんの転倒事故を通勤災害であると認めました。

 もっとも、懇親会に出席した後の帰宅途中に事故にあったケースでは、アルコールの量や懇親会の時間の長さ等を理由に、業務との関連性を否定した裁判例も少なくありません。

4.民法上の損害賠償請求

 労働に従事したことによって負傷等を負ったばあいには、使用者に対して民事上の損害賠償請求をすることもできます。労働契約法上も、使用者が労働者の安全に配慮する義務(安全配慮義務)を負うことが明確にされています。

 この場合、使用者に対する損害賠償請求は、労災補償給付とは別に(それと併存して)請求することができます。

2013/09/18 弁護士 矢崎暁子

(ホウネットメールマガジンより転載)

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