高齢者の不動産買取被害
2023年8月4日
高齢者宅を突然訪れ、高齢者に売却意思がないにもかかわらず、自宅を相場より低額で買い取る悪質な買い取り業者が問題となっています。
全国の消費生活センター等には、「強引に勧誘され、安価で自宅を売却する契約をしてしまった」「家賃を払ってそのまま自宅に住み続けることができると言われ契約したが、解約したい」といった、自宅の売却に関する相談が数多く寄せられています。とくに単身の高齢者が狙われる傾向にあり、国民生活センターの統計によれば、相談全体に占める70歳以上の相談割合が約50%に及んでいるそうです。
被害者に認知症が進んでいたり、売却後も住み続けられる契約になっていたため発覚が遅れた、という事例も報告されており、発覚していない被害も数多く存在することが推測されます。
物品に関する訪問購入にはクーリング・オフが適用され、契約日から8日以内であれば、事業者に連絡することで解約できます。しかし、業者が買主となる不動産取引には特定商取引法や、宅地建物取引業法に基づくクーリングオフの規定は適用されないため、業者による虚偽の説明や威迫などが証明できる場合でなければ被害回復が困難です。そのため、被害を未然に防ぐことがとても大切です。
ご家族や知人と情報を共有し、このような悪質商法が存在することを知っているだけでも、被害を未然に防ぐことにつながります。また、自宅に関する契約をするときは、常に周りに相談し、すぐに契約してしまわないこと、契約の時は、家族や知人に同席してもらいようにすべきです。迷惑な勧誘や長時間の勧誘に対しては、必要ないことを告げ、それでも帰らなければ、警察に通報することも有効な手段です。
不安に思った場合は、消費者ホットライン「188」や、お近くの法律事務所にご相談ください。
弁護士 村上光平(名古屋北法律事務所)
(「年金者きた」へ寄稿した原稿を転機しています)