高年齢者雇用安定法の改正 ~70歳までの就業確保措置が努力義務に
2022年1月5日
2021年4月、70歳までの高年齢者就業等確保措置に関する高年齢者雇用安定法の改正法が施行されました。
2013年の同法改正では、①60歳未満の定年禁止、②65歳までの高年齢者雇用確保措置としてⒶ65歳までの定年引上げ、Ⓑ65歳までの継続雇用制度(再雇用制度等)導入、Ⓒ定年制の廃止のうち、いずれかの措置を講じることが事業主に義務付けられました。
今回はさらに、65歳以上70歳未満の定年の定め又は継続雇用制度を導入している事業主に対し、①70歳までの定年引上げ、②定年制廃止、③70歳までの継続雇用制度(再雇用制度等)の導入に加え、④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入、⑤70歳まで継続的に事業主の実施する社会貢献事業等に従事できる制度の導入のいずれかの措置を講じることが努力義務とされました。
このうち、雇用関係がなくなる④⑤の創業等支援措置を導入する場合は、労働組合や労働者の過半数を代表する者の同意を得ることが必要とされています。しかし、たとえ同意があっても、労働基準法や最低賃金法、労災保険などの適用が否定される働き方を高年齢者に認めることは、働く人の権利を侵害する可能性があります。高年齢者は労災のリスクも高く、労働者の実態がある場合には、労働者として保護されるように法改正を求めていく必要があるでしょう。
また、③から⑤の措置を導入する場合は、対象者を限定する基準を設けることができるとされていますが、その場合でも、対象者の基準として、事業主が恣意的に高年齢者を排除しようとするなど法の趣旨や公序良俗に反するものは認められません。
今回の就業等確保措置はあくまで努力義務ですので、罰則はありませんが、必要と認められる場合、ハローワーク等の指導・助言の対象となる場合があります。
弁護士 裵明玉(名古屋北法律事務所)
(「年金者きた」へ寄稿した原稿を転機しています)