遺言なき場合の遺産分割協議について
2012年5月10日
遺言なき場合の遺産分割協議について
名古屋北法律事務所では、お付き合いのある団体からお声をかけていただいて法律講座の講師をさせていただくことがありますが、最近は高齢社会の反映か、「相続・遺言」をテーマにした講演が増えています。
今回は、複数の講座で上げられたご質問を取り上げます。それは、亡くなられた方が遺言書を残さなかった場合、相続人は、法定相続分通りに財産を分けるしかないのでしょうか?というものです。
遺言書のない相続において、遺産分割はどのようなルールで行われるかについて、お話しします。
1.遺産分割とは
複数の相続人がいる場合、相続が開始(すなわち被相続人の死亡)すると、遺産は各相続人の民法の定める相続分に応じた共同所有関係に移行します。遺産分割とは、このように、相続開始によって、相続人の共同所有に属している相続財産の全部又は一部を、各相続人の単独所有もしくは新たな共有関係に移行させる手続のことです。
2.遺産分割のルール
民法は、遺産分割は「遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情」を考慮してするものと定めています。たとえば、自宅建物について、死亡した親と同居してきており、現在も居住している者に取得させるなどの配慮がありえますが、これは遺産分割の指針に過ぎず、あくまで相続分を変更するものではないことに注意が必要です。
もっとも、協議や調停による遺産分割では、相続人全員の合意が成立する限り、相続分とは異なる観点から自由に分割でき、特定の相続人の取得分をゼロとする分割協議も可能です。
3.遺産分割の方法
遺言がない場合の遺産分割の方法には、相続人の話し合い(協議)による分割、調停による分割、審判による分割があります。
相続人に争いがなければ、協議による分割を行うことになります。遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、一部の相続人を除外して分割協議を行った場合には、分割協議自体が無効とされる可能性があります。
時期については、相続開始後、いつでも協議で遺産の分割をすることができるとされています。実際に相続開始後10数年経ってからの遺産分割も珍しくありません。
遺産分割協議書の作成は、法定の要件ではありませんが、遺産分割が適法になされたものであることを証明するためにも、遺産分割協議書を作成するのが通常です。
2012/5/10
弁護士 裵明玉
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