辺野古新基地建設を巡る訴訟
2023年12月1日
沖縄辺野古の新基地建設を巡り、軟弱地盤改良工事に伴う沖縄防衛局の設計変更申請について、国土交通相が県へ承認するよう「是正の指示」を出したことの違法性が争われた訴訟で、2023年9月4日、最高裁が是正指示を適法とする判決をしました。その後、国が設計変更を承認する代執行に向けて、知事に承認を命じる判決を求める訴訟が、現在、福岡高裁那覇支部に係属しています。
辺野古の新基地建設を巡っては長い歴史がありますが、2018年12月に辺野古の埋め立て予定地に土砂の投入が開始された直後に、埋め立て区域の4割余りで改良が必要な軟弱地盤が見つかりました。そのため、防衛省は、2020年4月、軟弱地盤を改良するのに必要な設計変更を沖縄県に申請しました。これに対して、沖縄県が、設計変更申請の不承認処分をしましたが、最高裁判決は、沖縄県の不承認処分に対して、国土交通省が是正の指示をしていたことの違法性が争われたものです。是正の指示とは別に、防衛省が不承認処分に対する異議申し立て(審査請求)を行っており、国土交通大臣が不承認処分の取消裁決もしていました。
もともと、沖縄県の不承認処分は、公有水面埋立法に定める変更承認の要件を充足しないとしてなされたものでしたが、最高裁判決は、この要件を充足するか否かの審理をせずに、取消裁決の拘束力を根拠に是正の指示を適法としました。現在、係属している代執行訴訟においても、同様に要件を充足するか否かの十分な審理をする姿勢をみせず、国の要請に基づいて、10月30日に1回で審理が終結されました。
こうした司法の姿勢は、本来、地方のことは地方の住民の意思に基づいて行うことを求める地方自治の本旨を全く無視したものです。残念ながら、今の裁判所には、独立した司法権を行使して、国の違法行為を監視する司法の番人としての役割を期待できない状況です。沖縄県では、県知事選挙、住民投票を通じて、「新基地建設ノー」の沖縄県民の意思は明白となっています。沖縄だけに基地の負担を押し付けている現状は、同じ国民として他人事ではいられません。この声を国政に生かせるような政治を求めていくように、沖縄の人たちと一緒に訴えていくことが必要です。
弁護士 加藤悠史(名古屋北法律事務所)
(「新婦人北支部・機関誌」へ寄稿した原稿を転機しています