裁判のIT化
2020年11月16日
裁判と言うと、法廷で弁護士が主張を言い合うというイメージがありますが、実際の裁判手続きの大部分が、法廷ではなく裁判所内の会議室で、口頭ではなく書類で争点を整理をするという手続きです。それでも、当事者が期日には裁判所に出頭して行う手続きであるということは原則でした(一部遠隔地の場合には電話で参加するということができました)。
2020年より、民事裁判のIT化がスタートし、裁判手続きをインターネット上で行うことが一部の大規模都市の裁判所から試行的に開始されるようになりました。特にコロナ禍の進展もあり、裁判所まで出かけるのではなく、事務所や自宅でITを使って裁判手続きを行うことが急激に進みました。
裁判所では、Microsoft社のTeamsというソフトを用いて、ビデオ通話システムで手続きを行います。インターネット技術の進歩は目覚ましいもので、実際に裁判所に行くときと同じようなやり取りができます。
また、書類のやり取りについても、これまではFAXが多く用いられてきましたが、FAXでは、細かい字や写真などを送付することが難しく、事前にFAXをしても字が読みずらいので別途、鮮明な書面の交付を求められるということもありました。ですが、インターネットを用いてデジタルデータでやり取りをすれば、そのような心配もしなくてよくなります。
日本は裁判のIT化において諸外国に大きく後れを取っていると批判をされていました。コロナ禍の影響とはいえ、普及が進んだのは良いことだと思います。
今後の課題は、ITで参加できるようになったことを利用して、弁護士以外の人が本人に成りすまして手続きをするなどの非弁行為をどのように排除をするかが課題とされています。
弁護士 白川秀之(名古屋北法律事務所)
(2020年10月に「年金者きた」へ寄稿した原稿を転機しています)