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知って得する法律情報

知的財産法(8)−職務著作について−

2013年3月27日

 今回は、「職務著作」と呼ばれるものについて取り上げます。

 突然ですが、私がいまここで書いている文章は、(仮に著作物と認められるとして)私に著作権が認められるのでしょうか?ここで問題となるのが、私が弁護士法人名古屋北法律事務所に勤務する弁護士で、その勤務中にこの文章を書いているということです。

 著作権法は、(1)法人等の発意に基づき、(2)その法人等の業務に従事する者が、(3)職務上作成するものであること、(4)法人等が自己の名義の下に公表するものであること、(5)作成時の契約、就業規則に別段の定めがないことを条件に、その法人等が著作権者となることを認めています(15条1項)。

 (1)は、従業員の業務として当然そのような著作物の創作を行うことが期待されている場合も含みます。私はこのコーナーの担当者に任命されているはずですので、こうした文章の作成が期待されているとは言えるでしょう。

 また、勤務弁護士が勤務中に業務に関係する文章を書いているのですから、(2)と(3)も認められそうです。特に契約や就業規則で定めてもいないので、(5)もクリアです。

 しかし、この文章を公表する際には、一応私の名義で行っています。「弁護士 鈴木哲郎」とちゃんと書いてありますね?そのため、(4)については、条件を満たしていないと考えられます。もしこれが「弁護士法人名古屋北法律事務所」の名前で公表されていたら、(4)も満たすことになってしまいます。

 こうして、この文章については、何とか私が著作権を主張できるのではないかと思います。問題は、そもそも「著作物」に当たるかということですが・・・。著作物の定義は、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」です(2条1号)。あれ、これは無理かもしれませんね・・・。

2012/11/16
弁護士 鈴木哲郎
(ホウネット中小企業メールマガジンより転載)


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