相続(2)香典や葬儀費用
2015年1月19日
相続の場面でよく問題となるのが、香典や葬儀費用の扱いです。
香典は、葬儀の際に贈られるもので、亡くなられた方(被相続人)の供養や、親族への配慮のほか、葬儀などに要する多額の出費への助け合い的な意味合いも持っています。
法律で明確に定められているわけではありませんが、慣習上、香典はいわゆる喪主に対する贈与とされています。
したがって、被相続人の遺産には含まれず、法律的には喪主が自由に使って良いお金ということになりますが、通常は、香典返しや葬儀費用に充てられていると思われます。
また、葬儀費用を誰が負担するかということについても、法律で特に決まっているわけではありません。相続人など関係者の合意のもとで葬儀が行われる場合には、負担者も合意によって決めることになります。通常は、遺産の中から出費を行う場合が多いでしょう。
金融機関も、葬儀費用に限っては、相続人全員の合意書がなくても預金の引出しを認めているところが多いようです。また相続税の申告の際も、葬儀費用は相続財産から除くことが認められています(相続税法13条)。
問題となるのは、関係者の間で合意ができない場合です。葬儀費用は被相続人の債務ではないので、遺産から出費することはできません。
この場合の裁判例を見ると、喪主が負担すべきというものが一般的のようです。どのような葬儀にするか自分で考え、自らの責任で依頼した喪主の負担とするのが相当であると、裁判所は考えているようです。
弁護士 鈴木哲郎
(「商工新聞」 名古屋北部民商へ寄稿)