少年法改正について
2021年9月15日
今年5月21日に少年法が改正されました。
少年法は、罪を犯した少年の更生を図るという見地から、家庭裁判所で少年審判という手続きを行い、少年の非行の背景を調査し、処罰よりも更生、立ち直りを重視しています。そのため、まずは家庭裁判所で審理をして、重大な犯罪だけを刑事裁判にかけるために検察官に送致する(逆送)という形をとっていました。改正法では、罪を犯した18、19歳を「特定少年」として、原則として逆送とする対象犯罪を、1年以上の懲役刑等が定められた犯罪へと拡大しました。
今回の改正は、選挙権年齢や民法の成人年齢が20歳から18歳に引き下げられることに対応したものとのことです。
ただ、少年法を改正しなければならない必要性が本当にあったのか疑問です。ニュースやインターネットなどで、少年犯罪がセンセーショナルに報道されるのを見ると少年犯罪が凶悪化、増加しているというイメージを抱きがちですが、少年犯罪は実際には減少しています。
令和2年版犯罪白書によると、2012年以降、検挙人員は戦後最少を記録し続け、2019年は戦後最少を更新し、3万7193人でした。また、再犯の非行少年の人員や比率も、2004年以降は毎年減少しています。
これは、家庭裁判所が行う少年審判手続きにおいて、少年の非行の背景に目が向けられ、処罰よりも立ち直りを図ることを重視した手続きを行ってきたことが、犯罪防止に有効であったからであるといえます。
少年法改正によって、逆送の範囲が広くなると、非行少年の多くが、その背景等を専門家によって調査されずに、処罰だけされて社会に戻って来るということになりかねません。そのことによって、再度罪を犯す少年が増え、かえって治安が悪化したら元も子もありません。
犯罪というものが社会で生じてしまったのであれば、それを再び起こさないという視点も重要です。今回の少年法改正はそういった視点を抜きに、成人と判断されるのだから、刑事裁判と、短絡的に考えて改正をしてしまったものだと思います。
弁護士 白川秀之(名古屋北法律事務所)
(「年金者きた」へ寄稿した原稿を転機しています)