国葬問題からみえること
2022年10月14日
今回は、法律情報とは少し違いますが雑感を。
ご存じの通り、岸田内閣は亡くなった安倍元首相の国葬を行うこととしました。
この国葬に対しては、実施の根拠や決定までのプロセス、多額の税金を費やすことの是非、個々の内心の自由との関係、反対多数の民意を無視していること、評価が二分される安倍元首相について国葬を行うべきなのかなど様々な観点から問題点が指摘されています。
ここでは少し視点を変えて、今回の国葬とその後を考えてみます。
多くのメディアで世論調査が行われていますが、いずれの調査でも国葬に対しては反対の意見が過半数を占めています。しかしながら、岸田首相は、一度決めたこととして国民の声には聴く耳を持ちません。国葬は、内閣府設置法の「国の儀式」にあたるので閣議決定をしたのだからよいというスタンスです。これが通用するならば多くのことが閣議決定だけで決められることになるので、これが納得のいく説明であるとは私は思いません。
ところで、自民党が進める改憲案では緊急事態条項があります。緊急事態条項とは、内閣総理大臣が、緊急事態において必要があるときは閣議にかけて緊急事態の宣言を発することができるというものです。宣言の発令によっては大きな私権制限がかけられることが想定されます。
今回の国葬は、首相やその周りの一部の暴走から始まったものとみていますが、閣議決定のみで国民の声を無視して突き進んでいます。もし、緊急事態条項ができたならば、時の権力者の暴走によっては、国民の声を無視して、様々な私権制限が加えられる未来も来るでしょう。今回の事例は未来に起きることを表しているのかもしれません。
そう思うと、国葬ひとつの問題の是非にはとどまらないなと感じています。皆さんはどのように感じますか?
弁護士 新山直行(名古屋北法律事務所)
(「新婦人北支部・機関誌」へ寄稿した原稿を転機しています)