嗚呼!東京地検特捜部…前首相の犯罪を見逃すのか
2021年3月1日
「桜を見る会」前夜祭の収支をめぐって、安倍前首相の公設第一秘書が略式起訴(*)として罰金で終わるとともに、東京地検特捜部は安倍氏を不起訴処分で終わらせました。こんなことで国民が納得すると思っているのでしょうか。
そもそもこの事件は、本来の目的・趣旨を忘れてほとんど「自民党有力者の支援者接待の場」と化していた「桜を見る会」前夜に行われた懇親会の費用の問題でした。主催した安倍氏の後援会の収支報告書に前夜祭に関する収支が記載されていなかったことに加え、参加者の懇親会費の一部(総額約800万円と報道されている)を安倍氏の後援会が負担したとする事件です。
*略式命令・・・軽微な犯罪について罰金刑で終わるような場合、正式裁判を行わずに、簡易な方法で裁判を終わらせる手続であり、示されるのは判決ではなく「略式命令」と言われ、この命令を求める起訴を「略式起訴」といいます。
前首相の犯罪捜査に及び腰の検察庁
政治家の汚職防止のためにその収支を透明化させることを義務付けた政治資金規制法によれば、本来であれば後援会に入ったお金、出たお金全てを収支報告書に記載しなければならないところ、これを怠っていたことを犯罪事実として、秘書のみが罰金刑に処せられたわけです。しかし当の安倍氏本人については、「秘書に任せており、安倍氏が知っていた証拠がない」などと本人の言葉を鵜呑みにして、無罪放免にしてしまったようなものです。本人が知らなかったと言えば通るのであれば政治家の犯罪は一切成り立たないのではないでしょうか。
さらにこの事件は、公職選挙法で禁止される「地元有権者への寄付行為」(公職選挙法199条の5)にも該当する(それも800万円!もの支出)ものであり、現役総理大臣だった時期の犯罪として、検察庁に徹底した捜査を期待していただけに残念でなりません。
このままでは終わらせない
この前夜祭をめぐっては、この問題を追及する「法律家の会」が結成されて徹底究明を求めていました。この事件をこれで終わらせることなく、今後、検察審査会への審査申立ても検討しているようです。
こんな買収まがいの支援者接待行為を放置しては、「票を金で買う」ことがまかり通ることとなり、民主主義の根幹を揺るがしかねない重大問題だということを検察庁トップはよく考えて欲しいものです。
弁護士 伊藤勤也(名古屋北法律事務所)
(2021年1月「新婦人北支部・機関誌」へ寄稿した原稿を転機しています)