労働者の健康と安全(2)
2010年5月24日
−労働安全衛生法の目的は?−
今回は、中小企業経営者の方々にぜひ知っておいてほしい法律である「労働安全衛生法」(長いので「労安法」と言いますね)についてお話しします。
突然ですが、「安全規則は、先人の血で書かれた文字である」という言葉があります。私もつい最近知りました。なんだか少し怖い感じの言葉ですよね。でも、労働安全衛生に関する法律や規則の条文一つひとつに、労働災害の犠牲となった従業員(労働者)の思いが反映されているということをとても分かりやすく表現した言葉だと思います。
なぜこんな言葉を紹介したかというと、経営者の方々が労安法を遵守していく上で一番重要なことが、こうした従業員の思いに耳を傾けることだと私は思うからです。
それでは、実際に法律の中身に入ってきましょう。
豆知識ですが、比較的新しく作られた法律には、第1条でその法律が作られた目的が書かれています。「なんでこんな法律があるの?」と思ったら、その法律の最初の条文を見ればいいのです(ちなみに法律は六法なんか開かなくてもネット上で見られます。たとえば「法令データ提供システム」で検索してみてください)。
そこで労安法の第1条を見てみると、「この法律は、労働基準法と相まって労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする」と書いてあります。
長ったらしくて申し訳ないのですが、要は、労安法は「労働者の安全と健康」と「快適な職場環境の形成」が目的となって作られたということです。その目的を達成するための手段として「危害防止基準の確立」、「責任体制の明確化」、「自主的活動の促進」などの「総合的計画的な対策」を推進しようと言っているのです。
でも、これではまだ経営者として実際に何をしたらいいのかさっぱりですよね。
では、次回は具体的に労安法で決められた経営者の果たすべき義務について見ていきましょう。
2010年4月19日
弁護士 鈴木哲郎
(ホウネット中小企業メールマガジンより転載)