労働者の健康と安全(15)
2010年11月25日
−労災申請手続− 前回までで、労災についての重要な点を一通り説明してきました。最後に手続の話をしたいと思います。
労災申請は、所管の労働基準監督署に対して申請書を提出することで、申請をします。労災保険給付の種類には何種類かあることは、すでに説明していますが、申請書も各給付に対応した書式が用意されています。給付の種類によって様式第○号と定められていて、「○号用紙」などと略すのはこのためです。
企業との関係では、労災が発生したときには、労災事故発生についての証明や休業補償給付(休んだ分の賃金)の請求には賃金額の証明を書く欄があります。
この証明欄を書くか書かないかで労災事故と認められるか認められないかが決まると誤解している方がいますが、労災事故か否かを判断するのは第1次的には労基署になりますので、証明書欄はその際の参考資料の1つにすぎません。労災申請書作成に協力しない「労災隠し」のケースがありますが、仮に事業者の証明書がなくても、労基署が調査の結果労災事故を認めれば、給付はもらえることになります。
その他、療養補償給付(医療費)の場合には病院の証明をもらうなど、個別の申請ごとに必要な手続は異なりますが、所定の用紙を用意しておけば、誰でも準備することができます。
労災事故か否かを判断について、さきほど「第1次的」には労基署が行うと書いたのは、労災と認められなかったときの不服申立手続が用意されているからです。労災申請が認められなかった場合には、まずは、各都道府県労働局の労働者災害補償保険審査官に対して審査請求(不服申立)をすることができます。
また、これでも認められなかった場合には、東京都の厚生労働省内に設置された労働保険審査会に対して再審査請求(再度の不服申立)もすることができます。これが行政手続内で用意された不服申立ですが、それでも認められない場合、裁判も可能です。但し、裁判をするにまずは労災申請、審査請求をおこなってからでないとできません。自社でそういったケースがあれば、まずは専門家の弁護士に相談するようにアドバイスするのがいいでしょう。
2010/11/9
弁護士 加藤悠史
(ホウネット中小企業メールマガジンより転載)
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