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知って得する法律情報

労働者の健康と安全(13)

2010年10月28日

−過労死について−

 労災について、労災保険給付の内容から通勤災害及び業務災害の注意点について連載してきましたが、今回は過労死について触れたいと思います。

 いまでは有名な話になりましたが、過労死というのは世界的にもまれに見ることで、欧米では元々「work oneself to death」と翻訳されていたものが、「Karoshi」として通用するようになっています。

 社会的にも認知されてきているので、イメージは分かりやすいと思いますが、具体的には、長時間残業や休日なしの勤務が精神的・肉体的な負担になり、その結果、労働者がくも膜下出血、脳梗塞等の脳血管疾患や、心筋梗塞や狭心症等の虚血性疾患等により死亡することを言います。

 厚生労働省のマニュアルでは、「過労死とは過度な労働負担が誘因となって、高血圧や動脈硬化などの基礎疾患が悪化し,脳血管疾患や虚血性心疾患、急性心不全などを発症し、永久的労働不能または死に至った状態をいう」とされています。通常の労災と同じですが、死亡が業務によるものかどうかが問題になるのですね。

 過労死の場合には、労働基準監督署は次のような死亡前の労働時間の基準に従って疲労の蓄積によるものか否かを判断します。
(1)発症前1ヶ月ないし6ヵ月間にわたって、1ヶ月当たりおおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まる。
(2)発症前1ヶ月間におおむね100時間、又は、発症前2ヶ月ないし6ヵ月間にわたって1ヶ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合には、業務と発症との関連性が強い。

 労働基準監督署は、この基準を重視しますが、裁判例では、労働時間が上記基準に達しない場合でも業務の加重性や本人の要因を考慮して業務による死亡であると認められるケースもあります。

 このメルマガでも話をしてきましたが、使用者には、雇用契約に付随する義務として、従業員がその従事する業務によって健康を害しないよう労働時間や労働条件等の環境を整備し、労働者の安全を配慮すべき義務、つまり安全配慮義務を負担しています。長時間労働が原因となって死亡した過労死の場合にも、労災だけではなく企業の責任が問題となりえます。

 使用者としては労働者が健康に働けるように、(1)時間外労働の削減(2)年次有給休暇の取得促進(3)健康診断の実施(4)産業医等による助言指導などを心がける必要があるわけです。

 皆さんの会社でも一度チェックしてみて下さい。

2010/10/13
弁護士 加藤悠史
(ホウネット中小企業メールマガジンより転載)

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