労働事件の迅速な解決方法〜労働審判手続
2008年6月2日
不当解雇事件
2年前の春先、ある資格をもっていたAさんは、取引先の社長から「B社が新しい事業を起こすので、その資格を生かして工場の責任者にならないか」と、転職の誘いを受けました。工場に一人は有資格者が必要なため(保健所への登録制)、B社は人材を捜していました。Aさんは悩んだ末、秋口頃に転職しました。
ところがB社に入社すると、Aさんは工場の責任者ではありませんでした。約半年後に、B社社長はAさんに対して営業の仕事をするように言い渡しました。「営業の仕事」と言っても、売る商品も取引先も自分で発掘しろと言う、非常識な業務命令です。
そしてB社は営業への配転から僅か2か月半で、業績が上がらない等の理由で給与支払い停止を告げてAさんを解雇しました。調べてみるとB社は有資格者の登録を、Aさんに無断で工場勤務実績のない女性名義に替えていました。Aさん採用後に安く使える人材が見つかりAさんが不要になったことが疑われました。
労働審判手続の申立
Aさんの事件ではB社の違法は明らかでした。
そこで私たちは、迅速な解決を目指して労働審判を申し立てました。
労働審判手続は、解雇、賃金・退職金未払い等の労働者と事業者との間の争いを迅速に解決するための制度です。申立をすると、裁判官(労働審判官)と労働審判員2人(労働関係に関する専門的な知識経験がある労働側、使用者側の各1人が任命されます)の3人による労働審判委員会が事件を担当し、まず和解による解決を試みます。特別の事情がある場合を除き、期日は3回以内で、その間に和解できなければ審判をおこないます。
Aさんの件は、不誠実なB社に戻りたくないと言う彼の希望により、3回めの期日で和解金支払の合意をして解決しました。
労働審判は、事実に対する労使の認識が大いに違う事件やまったく合意が望めない場合には向かないのですが、労使の合意が難しいとされる復職を求めるケースでも、不当解雇後1ヶ月で会社に復帰した例もあります。労働者が残業代を請求したいときなどにも有効でしょう。今後も積極的に利用していきたいと思っています。