働き方のルール
2006年7月18日
労働基準法は最低限の基準
九州大(福岡市東区、梶山千里学長)が、2005年度の全学の職員の給与について、残業時間に見合う正規の時間外手当を支払わず(少なくとも数千万円!)、福岡東労働基準監督署から是正勧告を受けていたそうです。しかも同大は去年の夏にも同様の勧告を受け、未払金約1200万円を遅れて支払っていたとか。教育機関で、というのは驚きですが、このような事例には枚挙に暇がありません。
職場で働き方のルールを決めているのは就業規則や個別の雇用契約で、就業規則は、その職場共通のルールを定めたもの、個別の雇用契約はその人毎の労働条件を定めたものです。
ただし、就業規則や雇用契約といっても自由に何でも決められるわけではありません。働き方のルールのうち最低基準の労働条件は、労働基準法によって定められているのです。
労働基準法は労働者の生活と権利を守るための法律ですから、法が定めている最低基準の労働条件を下回るような労働条件を定めても無効です。そのかわり法律を上回る条件を就業規則などで定めることは問題ありません。
たとえば、1日の所定労働時間は8時間を超えてはいけないことになっています。もっとも労働基準法36条に基づく、36(さぶろく)協定により残業時間の範囲を決めるなどの条件を充たせば、使用者は残業を命じることができますが、この場合でも原則として1週間に15時間以内、1年間で360時間以内などのように上限が決まっているのです。
そして、8時間を超えて働いた分については時間外労働に対する25%の割増賃金を払わなければなりません(所定労働時間を7時間と定めている職場では、8時間までの1時間は通常の賃金です)。午後10時以降午前5時までの深夜労働には25%、休日労働は35%の割増賃金が必要ですので、「10時すぎまで残業した」場合には50%増し、休日の残業は60%増しの賃金が請求できます。
残業時間や割増賃金については、残念ながら労働基準法の「最低限」さえ守られていないのが実情です。残業代の不払いは犯罪なのですが、使用者にその認識が薄いことは大問題です。