債権の回収(8) 担保権
2011年3月24日
債務者が債務の支払いをしてくれない時に、強力な権利となるのが担保権です。
担保がなければ、これまで説明したように、判決など債務名義を取得して強制執行をしなければならず、手続的にも負担があり、強制執行の対象となる適切な財産があるか否かも不明確です。
では、担保権とはどのようなものがあるのでしょうか。
民法には、留置権、先取特権、質権、抵当権の4つの担保権が規定されていますが、民法の規定以外にも譲渡担保や仮登記担保など様々な担保権があります。
これらの担保物件の多くは、契約に際して担保を設定することを当事者間で合意して始めて効力を生ずるものです。
したがって、事前に債務者に担保を提供させることが必要です。
但し、留置権と先取特権は特別な担保権で、事前に債務者との合意などは不要で、法律上当然に発生するため法定担保物件と呼ばれています。
このうち、留置権とは、ある債権について弁済がなされない場合に、その債権が特定の物について発生した場合に、その物を債権者が占有している場合には、債権の弁済をうけるまでは物を引き渡さないと拒める権利のことをいいます。
例えば、何か物を修理したのに費用を払ってくれない場合には、修理のために預かったものを返しませんよといえるわけです。
普通は、返さなければそれが債務不履行で違法となってしまいますが、留置権があれば、例外として債務不履行になりません。
また、競売申立権も認めており、競落人に対してもお金を払ってくれないと渡さないといえるために、事実上優先して弁済を受けることができます。
債務者が物を必要としている場合には、お金を払ってくれないと返さないよというのは強力な武器になりますし、事前に合意がなくても発生する担保権という意味で、いざというときに役に立つ可能性があります。
心のどこかに留めておくといいでしょう。
次回からは、当事者の合意によって設定する担保権の説明をします。
2011/3/15
弁護士 加藤 悠史
(ホウネット中小企業メールマガジンより転載)