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知って得する法律情報

債権の回収(15) 債権の管理

2011年8月21日

 債権の回収をテーマにしたお話は、今回が最終回です。
取引を継続していくうちに、取引先の経済状態が悪化し、債権を回収できなくなる可能性は常に存在します。
そこで、取引係属中から、自社の債権をしっかりと管理し、いざというときの債権回収に支障が生じないようにすることが重要になってきます。

 今回は、そんな「債権の管理」について簡単にお話しします。
ポイントは3つ。

(1)取引の記録の整理

 債権管理の基本は、現在その取引先にどれだけの債権があるのか、いつか回収できる予定なのか、取引先が予定どおりに支払わないときにどのような手段で回収できるのかを常に把握しておくことです。
そのためには、取引先ごとに取引の記録を整理しておく必要があります。
債権回収の最終手段は、取引先を相手に訴訟を起こして強制的に債権を回収することです(詳細は、「債権の回収(4)―強制回収―」で述べました)。そして、訴訟になったときは、証拠となる書類が揃っているかどうかが勝敗の分かれ目になります。
また、取引先に対して仮差押えを利用する必要が生じた場合や、取引先が倒産したときは(それぞれ、「債権の回収(10)―仮差押え―」「債権の回収(13)―取引先の破産―」で述べました)、一刻も早く書類を揃えて債権回収のスタートを切らなければなりません。
そのためには、記録を整理しておくだけでなく、すぐに取り出せるようにしておくことが重要です。

(2)入金状況のチェック

 取引先に請求すべき時期に請求すべき金額を請求し、回収予定日に請求した金額が入金されているかどうかを、その都度チェックすることが必要です。
予定どおりに入金されていなかったときはすぐ取引先に連絡し、入金するように催促します。請求もれなどの問題があることが判明したときは、ただちにその問題点を修正し、支払を求めます。
入金状況のチェックを怠ると、どうして予定どおりに入金されなかったのか、責任はどちらにあったのかなどが分からなくなり、容易に回収できたはずの債権が回収できなくなる危険性があります。

(3)与信限度額の設定・遵守

 「与信限度額」とは、取引先ごとに定めた売掛金の額や貸付金の額の上限のことです。
債権を確実に回収するために重要なことは、与信限度額を設定し、売掛金の額がこの与信限度額を超えないようにすることです。
与信限度額を設定する目的は、取引先の資力にあった取引をすることにあります。与信限度額を定めないと、取引先から注文されるままに商品を出荷してしまい、取引先が支払いきれないほどの多額の売掛金を抱えることになりかねません。
自社の営業社員には、与信限度額の遵守を徹底させる必要があります。売上げを上げたいがために過大な注文を受け、結局多額の売掛金を焦げ付かせてしまうおそれがあるからです。

その他、前回お話しした時効の問題もあります。債権が時効で消滅しないように注意する必要があります。

2011/8/4
弁護士 鈴木 哲郎
(中小企業メールマガジンより)

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