債権の回収(12) 債権譲渡
2011年8月4日
前回は相殺による債権回収でしたが、今回は債権譲渡による債権回収についてです。
債権譲渡も、聞いただけでは債権回収とどんな関係があるのか分からないかもしれません。
具体的な事例で考えてみましょう。
例えばA社がB社に対して、100万円の売掛金を持っているとしましょう。しかし、B社はお金がないといって、なかなか支払ってくれません。一方で、B社はC社に対して売掛金が100万円ありました。このような場合に、A社としては、C社と交渉をして、100万円のB社に対する債権を買ってもらうのです。もし、C社がこれに応じてくれた場合には、A社はC社への債権売却代金で売掛金を現実に回収することができ、C社も譲渡された債権とB社に対する債務とを相殺することによって、100万円のB社に対する買掛金が消滅することができるのです。
A社としてはB社から回収に困っていたわけですから、100万円の売掛金をC社へ90万円ほどに値引きして売却しても、現実に回収できれば満足でしょう。また、C社も90万円を支払って100万円の債務が消滅すれば、うれしい話です。
現実には、C社からの入金によりキャッシュが手に入ることを期待していたB社は困るかもしれませんが、もともと債務の支払いを怠っていたのですからやむを得ません。ただ、A社としても、B社との関係は継続することは難しいと思いますので、今後は取引を終了してもいい相手と考えている時などに利用します。
強制執行の手続とるならば、A社は債務名義をとって、B社からC社への売掛金を差し押えて、C社から回収するという手順を踏まなければなりませんが、C社と交渉することによって、同じ効果が得られるのです。
債権譲渡の際に気を付けることは、債務者に対して譲渡人から通知が必要な点です。第三者に対しても債権譲渡を主張するには確定日付(通知した日を公的に証明できること)が必要ですので、内容証明郵便を利用するのが一般的です。
もし、債権回収に困っている場合には、こういった方法も考えてみてください。
2011/8/4
弁護士 加藤 悠史
(ホウネット中小企業メールマガジンより転載)