債権の回収(10) 仮差押え
2011年8月4日
取引先が売掛金などの債務を任意に支払わず、担保も取っていない、という場合には、裁判所に訴訟を提起して、取引先の財産に強制執行をすることにより債権を回収することになります(この辺りの話は、第4回や第5回を参照してください)。
しかし、訴訟で争っている間に、取引先が財産を処分してしまったり、他の債権者が取引先の財産から先に回収を図ったりすることも考えられます。これではせっかく裁判に勝っても意味がありません。
そこで、強制執行の手続をとるときに備えて、取引先が勝手に財産を処分したりしないように、訴訟を提起する前に取引先の財産を凍結してしまうことが重要になってきます。
そのための手続が「仮差押え」です。
仮差押えを行うのは裁判所です。そこでまず、売掛金や貸付金、請負代金など、仮差押えによって守ってほしい債権(被保全債権といいます)があることを裁判所に信じてもらうことが必要です。
そのためには、契約書や注文書、納品書、伝票、請求書、あるいは手形などの証拠書類を準備しなければなりません。仮差押えは迅速性が要求されるので、こうした準備は早急に行う必要があります。
また、仮差押えは、将来の強制執行に不安があるときでなければ認められません。つまり、「この取引先アブない」と裁判所に思わせなければならないのです。
そこで、取引先が最近処分した不動産の登記簿謄本や、不渡り手形、信用調査機関の報告書などを裁判所に提出します。こうしたものが準備できなければ、取引先の状況を具体的に記載した上申書などを提出します。
最後に、仮差押えには保証金を供託することが必要です。保証金の額は、被保全債権の20%から30%程度の金額が定められることが多いようです。裁判所から命じられたら直ちに供託できるよう、あらかじめ準備しておきましょう。
2011/8/4
弁護士 鈴木 哲郎
(ホウネット中小企業メールマガジンより転載)