中小企業と金融商品取引被害(2)
2013年5月28日
中小企業が金融商品を購入するといってもピンこない方も多いかもしれません。実際、中小企業の側から積極的に為替デリバティブ契約を要望することはほとんどありません。しかし、為替デリバティブ契約を保有している中小企業は平成22年9月の金融庁調査で19000社もありました。
金融機関が為替変動リスクをヘッジするための商品として勧めた結果です。実際には、企業が大きな損失リスクを抱える投機的取引ですが、手元資金は必要なく、メインバンクが勧めるのだからと信用してリスクを理解しないままに契約してしまうところが落とし穴です。
例えば、あらかじめ1ドル=100円で行使価格を定めておき、10万ドル取引をしたとします。1ドル=100円を下回らないような時期は、特に損失はありませんでしたが、リーマンショック以降はご承知のとおり、円高が一気に進みました。1ドル=80円となれば、1ドルあたりは20円ですが、10万ドルの取引であれば1回の取引で200万円の損失が発生することになります。
この取引(損失)が毎月続いても、5年10年と長期契約を結んでいるため、解約をすれば莫大な清算金が必要になります。1ドル=80円程度のレートであれば、数千万円単位の清算金が必要になることが普通です。進むことも引くことも困難な大きなリスクがあるのです。
問題は、金融機関が契約に際して、取引の中身やリスク、解約清算金等について十分な説明をしていないことです。そのような莫大な損失が発生した場合にはどのような救済策があるか、次回から順に説明していきます。
2013/03/26
弁護士 加藤悠史
(ホウネット中小企業メールマガジンより転載)