リツイートと名誉棄損
2022年1月18日
1 伊藤詩織さん中傷でリツイートに対しても賠償命令
性被害を訴えたジャーナリストの伊藤詩織さんが、ツイッターに投稿されたイラストによって名誉を傷つけられたなどとして漫画家はすみとしこ氏ら3人に損害賠償等を求めた裁判で、2021年11月30日、東京地裁は、はすみ氏に88万円、はすみ氏の投稿を、コメントを付けることなくリツイートした男性2人にも、それぞれ11万円の支払を命じました。
2 名誉棄損ツイートをリツイートすることの違法性
ツイッターでリツイートとは、他人の投稿の内容をそのまま再投稿して第三者に広める行為をいいます。
上記東京地裁は、コメントを付されていないリツイートは、一般の読者の普通の注意を基準として、前後の内容などからリツイートをした意図が理解できるような特段の事情がない限り、元ツイート(当該事案でははすみ氏のツイート)の内容に賛同する意思を示す表現行為と解するのが相当として、リツイートした行為も名誉棄損にあたるとして責任を認めました。
もっとも、コメントを付されていないリツイートは必ずしも賛同する意思を示すものとはいえないとの考えもあります。
他の裁判(大阪高裁2021年6月23日判決)では、他人の社会的評価を低下させる内容の元ツイートをリツイートした場合、リツイートした側は、違法性を排除する事由がある場合を除き、経緯、意図、目的を問わず不法行為責任を負うとの判断が示されています。
ただ、いずれにしても、裁判所は安易なリツイートに対して厳しい姿勢を示しているといえます。
3 気軽なリツイートでも人の心を傷つける可能性
伊藤さんは判決後の会見で、「リツイートは簡単にできますが、誹謗中傷のポスターを街に貼られるより強烈です。」と話し、はすみ氏のアカウントは停止されたが、リツイートによってイラストはネット上に残っているとしたうえで、「リツイートする人は責任を持ってほしい。」と訴えています。
名誉棄損ツイートをリツイートすることについても法的責任を認めた今回の判決の持つ意味は大きいと思います。
弁護士 篠原宏二(名古屋北法律事務所)
(「新婦人北支部・機関誌」へ寄稿した原稿を転機しています)