【労働】変形労働時間制の主張を打破した事案
2020年7月22日
Aさんは本社を東京におき全国に工場をもつ会社に勤務し、名古屋の工場で働いていました。人手不足のしわ寄せで常に残業があるような状態でしたが、給与明細には一応、残業手当はついていました。Aさんはご家族の事情もあり会社を退職することになりましたが、退職前3か月の残業時間が100時間近くあったにしては、残業手当が過少ではないかと思い、相談に来られました。タイムカードをもとに未払残業代として100万円近くあると計算できました。そこで、会社に対して未払い残業代の請求を行いました。
これに対して会社も弁護士をつけ、就業規則や労働協約を示し、1年単位の変形労働時間制を導入しているため未払い残業代は5万円程度にしかならないとの回答が来ました。労働基準監督署にも届け出がしっかりと出されているため難しいかとも思われました。
しかし、会社が説明に提供してきた変形労働時間制を導入する就業規則や協約の届出先は東京本社の所在地を管轄する労働基準監督署のものでした。そこで、Aさんの事業所を管轄する労働基準監督署の届出の有無を確認すると届出はないとのことであったため、Aさんについては変形労働時間制の適用が及ばないから通常のタイムカード通りの残業代を認めるべきだと交渉したところ、これが受け入れられ満額に近い金額での示談が成立しました。
2020年7月22日
弁護士 新 山 直 行