「特定秘密保護法」(秘密保全法)の問題点
2013年10月16日
皆さんもご存じの通り、政府は「特定秘密保護法」(秘密保全法)の成立を目指しています。9月27日には、マスコミを通じて政府原案が公表されました。今回は、この「特定秘密保護法」(秘密保全法)の問題点についてお話しします。
◆政府が公開を望まない情報についてはすべて「秘密」◆
秘密保全法の問題点は非常にたくさんありますが、何よりも、秘密保全法の対象となる「秘密」が非常に広範囲にわたるという点があります。
政府原案では、防衛、外交、テロ等の4分野に関して、「我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要である」と行政機関の長が判断したものを「秘密」としています。一見すると、「秘密」の対象が限定的に見えますが、実際は自衛隊や米軍,外交情報のほとんどすべてが「秘密」の対象となってしまいます。また、テロ対策の名の下、原発に関する情報までも「秘密」に指定でき、政府が公開を望まない情報についてはすべて「秘密」にすることができてしまうのです。
◆民主主義の危機◆
秘密保全法は、このような「秘密」を公務員が漏らした場合だけでなく、取得したり、取得するように持ちかけただけで厳罰に処せられるものです。
民主主義が機能するためには、政府が何をしているのかを市民が知る必要があります。それができなければ、市民は政策の是非を判断できず、民主主義は機能しません。国民が国の情報にアクセスできる「知る権利」は基本的人権の一つであるといえます。
また、その知る権利が充実するためには、報道の自由が保障されなければなりません。秘密保全法が成立すると、政府が何をしているのかの情報が報道されなくなり、国民が政府の情報を十分に知ることができなくなってしまいます。このような状態になったら民主主義は十分に機能しなくなってしまいます。
政府原案では、「報道の自由に十分に配慮するとともに、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならない。」としていますが、いったん法律が作られれば後は運用次第ですから、リップサービスにすぎないといえるでしょう。
◆秘密保全法成立の阻止を!◆
この他にも秘密保全法には、「秘密」に携わる人物の身辺調査を可能にしたり、秘密保全法違反で起訴されたとしても、裁判の中で、「何を漏えいしたか」という起訴内容の重要部分が公開されない危険がある等、様々な問題点があります。
秘密保全法に対しては、報道機関、研究者、民主団体、弁護士などはもちろん、女優の藤原紀香さんもブログで反対を呼びかけており、徐々にその危険性が知られるようになってきています。
秘密保全法の危険性を多くの方に知ってもらい、成立を何としても阻止しなければなりません。
2013/10/16 弁護士 裵明玉(ぺみょんおく)
(「新婦人きた」へ寄稿)