「暮らしと法律を結ぶホウネット」秋の連続法律講座法律講座 「成年後見制度の基礎」のご報告です。
2010年12月1日
「暮らしと法律を結ぶホウネット」が開催した法律講座につき、下記のとおりご報告します。
日時:2010年10月7日(木)14:00〜16:00
会場:名古屋市北生涯学習センター 第5集会室
テーマ:成年後見制度の基礎
講師:山内益恵弁護士(名古屋北法律事務所)
高齢化社会と言われて久しいですが、地域や家族とのつながりが弱くなっていると言われる現代、自分の判断能力が乏しくなったときの自分の生活や財産はどうなってしまうのか、不安に感じている中高年の方は少なくありません。
成年後見制度は、家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等が、本人の利益を考えながら、本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人で法律行為をするときに同意を与えたりして、本人を保護・支援する制度です。
ホウネットの法律講座は平日夜に開催されることが多いのですが、今回は平日の日中に開催しました。受講者は21名。身内や自分自身の今後を心配している個人の方から、グループホームの職員さん、社会福祉法人の代表者や会社の経営者など多彩な顔ぶれでした。成年後見への社会的関心の高さが伺えます。また、事前に地域に配布した事務所のチラシも功を奏したようで、初参加の方も多く見受けられました。
講義の内容は、成年後見制度の趣旨や、前身である禁治産制度との違いの説明から始まり、後見人・保佐人・補助人という種類の違いを、図で描かれたパンフレットを資料にわかりやすく説明されました。専門的な文言はありますが、ごく簡単にいえば、本人(『被○○人』といいます)の判断能力の程度によって、後見人等の同意権・取消権・代理権の権限が変わってくるといえます。
後見人等の側からすれば、財産などを本人の同意無しに管理できれば楽なのかもしれませんが、何よりもこの制度は本人の幸せのためにあるもの。後見人等は裁判所に定期的に業務報告をしなければならないし、勝手に財産を処分したり、ましてや使い込みなどすれば、裁判所から厳しく罰せられるので軽く考えてはいけません。
本人へ生活費を渡したり、必要に応じて各種契約を結んだり財産を処分したりする他、ことによっては、たとえば本人がどこかに寄付をすることを自身の幸せと感じるならば、その手続も本人に替わってしてあげるべきだそうです。
次に後見開始の申立の手続や、選任された後見人等の職務について。さらに、将来自分の判断能力が衰えることを視野に入れて、あらかじめ財産管理等の契約をする任意後見制度についての説明もありました。個人で参加された高齢者の多くは、この話題に関心があったのではないでしょうか。
核家族社会で、孤独な高齢者がどんどん増えています。新聞・テレビなどでも、高齢者を狙った詐欺の報道をよく目にします。老後の蓄えをむしり取られてはひとたまりもありません。後見人等は、こういった犯罪から本人を守るためにも有効な制度なのです。
講義後の質疑応答では具体的な質問が飛び交いました。
・身内の問題について・・・身内の判断能力が衰えてきたので信頼おける人に後見人を頼もうと思っているが、当方も裕福ではないため費用がいくらかかるか不安だ。
→後見人の報酬は、被後見人の財産内で支払われるもの。もし、本人の財産が乏しく、報酬が心許ないとあなたが感じるなら、後見人を引き受けてくれた人との個別の契約を結ぶということはあるかもしれない。
・自分自身について・・・遠くに住む親族に自分の世話を頼むのも気が引けるので、檀家になっている寺の住職さんを頼ろうと思っている。
→信頼できる友人として引き受けてくれることはあり得るかもしれないが、後見制度についてきちんと説明してお願いすべき。ただ、利害が発生しないのであれば、まずは親族に将来のことを相談しておいたほうがいいかも。
・社会福祉法人代表者より、障がい者の後見について・・・本人は50代で、親は子どものことを心配しながら亡くなってしまった。うちのグループホームに招き入れたいが、集団生活になじめないと本人は渋っている。
→後見制度は本人が亡くなるまで継続される業務なので、高齢者以上に障がい者の後見は大変だと思う。当事務所でも、今後は後見制度を課題として取り組んでいくので、社会福祉法人とは密接に関係していくでしょう。
事務局F